神戸市西区の医療法人財団兵庫錦秀会神出病院で起きた事件を受け、すべての一人一人が社会の構成員であるとの前提に立ち、多様な発信により、人権侵害の黙認という固い土壌を耕し、解決の糸口を提案していく。 (バリアフリーチャレンジ声明文より)

こちらの声明文を受けて、すでに、6名の方が記事を書いています。そして今回、私にバトンが回ってきました。

この事件のことをただただ嘆いていても何も変わりません。「悲しみ」「怒り」「憤り」「残念さ」など様々な感情もありますが、少し視点を変えて、「私たちはこの事件から何を学び、今後この社会の中で活かすことができるのか?」というところから書かせていただくことにしました。

このような事件が起きてしまう背景

私たち人間社会では、自分より弱いものを踏み台にして上に上がっていくことで、この社会の中で地位や立場を築いて行くということが行われてきたように思います。

その時代その時代で強さの象徴となるものは異なったのかもしれませんが、この社会はまさに弱肉強食の世界です

私たちの中には本能として、弱者を食い物にすることで生き残っていくという、素質があるということ。また、強いものに逆らうことができない弱さを持っているということも心に留めておく必要があるのかもしれません。

声を上げることと声にならない声

そういう、私も小学生の頃、同じクラスの女子から物を取られたり、悪口を言われたり、嫌がらせをされたりしていて、それがどんどんエスカレートしていき、毎日学校に行くのが嫌だと思っていました。

ある日、どうにもこうにも我慢できなくて、思い切ってその子を放課後に階段の踊り場に呼び出して、「どうしていつも私ばかりいじめるの。もう止めて欲しい。」と体を震わせ泣きながら訴えました。彼女が何を言ったのかは忘れましたが、それ以来その子は私に対して意地悪するのを止めました。

いじめられることをひたすら下を向いて我慢している苦しさは、いじめられた人にしかわからないかもしれません。
そのような想いを今回の事件の被害者の方々も感じていたことでしょう。
そして、彼らは「もう止めて欲しい」という、ひとことを言うことができなかった。

 

【Dialogue on Issue】という取り組み

 

私が運営しているGiftでは、まだあまり語られていない社会課題について対話をする【Dialogue on Issue】 という取り組みを行っています。そして、今回のこのバリアフリーチャレンジの企画はまさに【Dialogue on Issue】 そのものだと思っています。

今回の様々なライターの考えに触れていただくことも大事ですが、皆さんもこの事件に対して真剣に誰かと対話をしてほしいと思っています。

決して正解が出てくるわけではありませんが、このようなことが再び起きないようにするために、何ができるのかを考えてほしいのです。私たちは、誰もが当事者となりうるし、当事者ではなくても傍観者という立ち位置で、様々な社会課題に対して加担していることを忘れないでほしいと思います。

例えば、今回の事件でも、看護する人は疲れやストレスなどの様々な要因があったのかもしれません。また、それに対する感謝や喜びを感じることができなかったのかもしれません。

しかし、それは、私たち誰もが持つ社会に対するしんどさでもあると想うのです。

 

誰かの責任にすることで、この問題を終わらせないでほしいと思います。

そして、本当にこの課題の底にあるものが何なのかを探って見る必要があるのではないかと思うのです。

 

まずは、今回の事件に限らず、社会の中で起きているひずみや、声なき声を声にして発してみることはできないでしょうか。

 

そうすることで、一人でも多くの人が、この事件の背景にある私たちの心の弱さに気が付き、このような事件が今後も起きないよう、また、そのような場に居合わせたときに、声を上げることができる人が増えることを願っています。

 

分かち合うことが社会を変える可能性

 

私は、Giftの活動を通して、分かち合う喜びが広がる社会を創りたいと思っています。

それは、多く持つ人が、持たない人に資源を分け与える社会です。

単なる理想の社会のように捉えられるかもしれませんが、新型コロナという見えざる驚異に対しては、私たち人間はすべてが弱者となってしまいます。そんなこれからの社会では、自分たちより弱いものを食い物にしていたのでは、私たち人間はこれからの社会を生き残っていくことはできなくなってしまいます。

 

まずは、自分が誰かのためにできることに喜びを感じてみてください。

私たちは、人に与える喜びを通して、自分自身がより幸せになることができるのです。

 

誰かの不幸の上に成り立つ快楽ではなく、分かち合う喜びを共に感じ、喜びも資源も分け合えることが、この社会を弱肉強食の世界ではなく相互依存の世界に変える一歩なのではないでしょうか。

 

 

 

これからも、このような事件が起きないことを願って締めくくりたいと思います。

投稿者プロフィール

小山真由美
小山真由美
特例認定NPO法人Gift理事長
https://giftboxcharity.org/db/