大切なのは、「今、目の前にいる当事者に最大限の関心を持つこと」
障害福祉サービスの実状
インタビュー実施日:2016年11月20日
―相談支援専門員という肩書きですが、
一般の方に分かりやすいようにどのようなお仕事をされているのか
まずは大まかに教えてください。
(aruiru)
相談支援専門員という資格があって、
分かりやすく言うと、なじみのある介護保険制度のケアマネージャー
(以下、ケアマネ)の役割を障害福祉サービスの分野でしている感じです。
―ケアマネは高齢者の介護保険サービスの、
相談支援専門員は障害者の福祉サービスの利用
に関する調整を担当する
ということでいいでしょうか?
(aruiru)
そうですね。
介護保険と同じく、障害福祉サービスを利用するための計画
が必要と障害者総合支援法で定められています。
「障害福祉サービス等利用計画」といいます。
―制度面の話をして頂きましたが、
具体的な仕事内容がイメージしやすいように、
平均的な一日の仕事の流れを教えて頂けますか?
(aruiru)
はい。私は相談支援専門員
(計画相談を作成する資格のある者)
がいるだけの事業所ではなく、
行政の委託業務も行う
「障害者地域生活支援センター」
というところで働いています。
ここは24時間・365日相談対応ができる
という体制になっています。
日々の業務は9時~17時ですが、
シフト制で19時までセンターに職員がいます。
仕事の内容は、1日にアポがある方だけでも
2、3件利用者さんのお宅に訪問します。
で、計画相談支援のアセスメント・モニタリングや
現状確認、委託業務上の認定調査・勘案調査
などを行います。
―利用者さんというのは、
各種の障害福祉サービスを
利用されている障害者ですね?
(aruiru)
そうです。
それ以外は、電話・来所相談対応とサービス
の調整がほとんどです。
あとは、自立支援協議会の部会に出たりします。
―委託業務の説明もお願いします。
(aruiru)
障害福祉サービスの中の、
分かりやすく言うとヘルパーさん
(法的に言うと、重度訪問介護・行動援護などの居宅介護サービス)
を利用しようとする方は、必ず「障害支援区分」の認定を
受ける必要があります。
これは、その区分を確定する認定調査を行うモノです。
認定調査は状態が変わらなければ3年に1回です。
それとは別に年に一度勘案調査があります。
ここではサービスの支給量が
現状に即しているかどうかを聞き取ります。
介護保険でいうと、要介護認定の調査ですね。
介護保険では、非該当~要介護5
までの8段階があります。
障害福祉サービスでは非該当~支援区分6までの
7段階が設定されています。
要介護度と支援区分の大きな違いは、
介護保険では単位で決められており、
上限を超えるサービスに
自己負担が発生する点です。
一方、障害福祉サービスでは
個別性がかなり重視されています。
必要に応じて支給決定される
サービスの幅が異なります。
ですから、次のような差が生じます。
介護保険ではケアマネに
支給決定権があります。
障害福祉分野では、
相談支援専門員ではなく、
行政に支給決定権があります。
前述の「勘案調査」
が必要になる理由です。
で、支援区分の認定調査では、
調査員として自宅を訪問し、
家族構成・住宅状況・既往歴・職歴等の他
80項目に及ぶ聞き取りを行います。
80項目の中には、身体機能・精神機能
行動障害関連・医療の項目があります。
「どこにどのような支援があればできるか」
ということを細かく聞き取ります。
障害福祉サービスでは、
同居家族がいて、
介助している場合でも、「この部分を家族が
」というように、「本人が一人で生活した場合
必要な支援はどうなのか」という個別性に着目
します。他方で、介護保険では同居家族の介助は
介護力として見るので家族の介助でできるならば
その部分の支援は不要という判断になるようです。
―今の説明からすると、
東京都知事風に言うと、「利用者ファースト」
が徹底されているのが障害福祉サービス
の考え方なのでしょうか?
(aruiru)
ファースト苦笑
まぁ、そうですね。
相談支援専門員としてのやり甲斐
―行政からの委託業務として
年に1度の調査を行うとのことですが、
私自身の障害を考えるとそんなに状態が変わらない、
つまり調査の必要性がそこまであるのか疑問なのですが
その辺はどうでしょうか?
(aruiru)
様々です。
例えば脳性マヒという障害名が決まっていても、
加齢に伴い、関節の変形や筋力の低下があり、
ADL(日常生活動作:歩行・立位・などの基本的な動作)
は変化します。
精神疾患の方であれば、
例えば、ケガや内科的疾患で
入院すると状況が変わります。
転居など家庭環境の変化による影響もあります。
―福祉サービスを受けていくには、
キチンとした現状確認が必要であると?
(aruiru)
そうです。
―この行政の委託業務の調査と
相談支援専門員としてのアセスメントは、
性質が違うのでしょうか?
ここは、大事な部分と考えています。
委託での調査は、
言わばサービス利用にむけての
アセスメントです。
具体的に、
「〇〇が不足しているので△△というサービス
を利用する必要がある」
ということを明らかにするものです。
相談支援専門員としてのアセスメントは、
「本人が望む生活」に向けて行います。
サービスを利用するためだけのものではない
ということです。
相談支援専門員の役割は本人支援のチームづくり
関連して、法的に必要になると説明した
「障害福祉サービス等利用計画」について。
私は個人的にこの「等」という部分が好きです。
既存の公的なサービスだけではなく、
本人が望むなら隣人やボランティア、
家族、友人、ペットももちろん
「等」に含む。
障害福祉サービス以外の
例えば、生活保護のCWなど
挙げていけばきりがありません。
イメージとしては、
チーム作りをする感じです。
色々な人や物を巻き込んで、
足りない部分は作っていく(=地域課題)
くらいの気持ちで
やっていきたいと思っています。
そういう感じで、
利用者本人と計画を
作っていくとは
すごく楽しいです。
目標を達成したくなるし、
どんどん次のやりたいことが
出てくる感じです。
その変容のダイナミクス、
(変容として傍目には映りますが)
実はもともとご本人はその力を持っています。
環境や疾病により発揮できずにいたりという
障壁をどんどん一緒に取り払うのです。
それを計画書にまとめていく。
ご本人と支援者達とでその歩みを進めていく
醍醐味を共有できるのが、計画相談支援だと思います。
【相互エンパワーメント※】です。
※力を与えるという意味
―委託業務と専門員の計画相談の位置付けが
すこし複雑なんですね。
(aruiru)
計画相談をできるのが相談支援専門員で、
委託業務ができるのは、
神戸市では障害者地域生活支援センターだけです。
私は支援センターにいるので、
委託業務の認定調査、勘案調査もしつつ、
相談支援専門員として計画相談もやっています。
計画相談は障害福祉サービスの一つですから、
支給決定権はなく、「見立てはこうです」
というものを行政に出します。
他方で、委託業務の方から
「こうです」というのも出して、
両方の材料を元に、
行政が支給決定をするということです。
分かりづらいですよね。
―いえ、よく分かりました。
(aruiru)
いや、嘘やと思います笑。
―イメージは作れましたよ。
ところで、社会福祉士や介護福祉士など
複数の福祉関係の資格を保有されていますね。
相談支援専門員をするために必要だから、
これらの資格を取得されたのでしょうか?
それともこれまでのキャリアの中で、
社会福祉士などを取得するモチベーション
になることがあり、取得された。
で、結果として、相談支援専門員
の仕事に近づいたのでしょうか?
(aruiru)
もともと、福祉分野で働いていましたが、
相談支援専門員という仕事が
あるとは知りませんでした。
資格取得の過程で、
テキストで名称程度は知っていましたが、
たまたまあった求人で、
「近くにこんな仕事ができるところがある」
という感じで応募し、採用されました笑。
で、資格の要件を満たしていたので研修を修了し、
名乗れるようになりました。
専門員の他、委託事務の研修にも参加して
認定証を持っています。
―スキル的に両方の要件を満たす人材
ということでセンターとしては、
(aruiru)
ちょうどいいのが来た、みたいな笑
―社会福祉士の資格を保有していると、
現場で活躍できる範囲が広がりますか?
(aruiru)
広がると思います。
今なら、福祉系の大学の若い人は、
社会福祉士と精神保健福祉士試験を
卒業見込みで受験し、
取得されている方が多いと思います。
ただ、私はもう歳なので、
ちょっと違う歩みになっています。
―仕事の細部の話に移ります。
「相談」というワードが入っていますし、
以前勉強会で伺った話からすると、
「対人」の性質の強いお仕事ですよね。
これまで色んな方々と接点があったでしょうが、
印象に残っている出来事やこういう面でやり甲斐を感じるとか
これは大変だな、という辺りを言える範囲でお願いします。
(aruiru)
そうですね、
思い浮かぶことはいろいろありますが・・・
―答えにくそうなので、
具体的に質問します。
相談支援専門員として2年のキャリア
の中で大まかに言ってどれくらいの方に、
関わってこられましたか?
(aruiru)
委託では、100人以上、
もっとかもしれません。
相談支援専門員としては60件超です。
―障害者が相手ですから、
生活が改善していって良かったな、
ということもあるでしょうし、
逆に残念な思いをすることも当然あるかと思います。
(aruiru)
そうですね。
でも、あんまり良かったな、
残念だなという感じ方を
しないようにしています。
―それは職業人としての自分のあり方として
そうされているんですね?
(aruiru)
はい。
でも、何を持って
サービスが終了するかというと、
亡くなられるか、
自立に向けて社会参加されて、
障害福祉サービスが不要になるかです。
それ以外は継続ケースとして
関わることになります。
福祉専門職としての原点とキャリア
―障害福祉サービスを利用される方とは、
同じ職場に留まっていれば、
何十年にも渡って関わる可能性がありますか?
(aruiru)
十分にあります。
私は今の職場で2年ですけど、
本人が特別支援学校を卒業されて、
18歳、19歳で、そこから20年、30年という
長いスパンで支援をされている方々がいます。
ご両親の高齢化や兄弟の結婚、出産
というライフステージの変化に立ち会います。
もちろん本人の結婚や出産もあります。
そこに寄り添い、支援していくことが
私にとっての障害福祉の仕事の魅力だと思っています。
印象に残っていることとして、一番すぐに
思い浮かんだケースをご紹介します。
ご本人は40代の元看護師で難病のALS※になって、
2年間という凄い早さで亡くなられました。
—–
※運動神経系が少しずつ老化し使いにくくなっていく病気。
運動神経系の障害の程度や進行速度は、
個々の患者さんでみな異なります。
知覚神経系は障害されないと言われています。
ALS患者さんは、長い間、発症後3~5年で生じる
呼吸筋麻痺や嚥下筋麻痺で亡くなる病気とされてきました。
しかし、現在では、呼吸の補助や経管栄養、
胃ろうなどの発達により、長期に療養することが
可能となってきています。
呼吸の補助をしながら療養している患者さんでは、
会話による意思疎通が図りにくくなることも多いです。
そのような場合でも、残っている他の運動機能系を用いて、
会話以外のコミュニケーション手段が
様々考えられてきています。
また、ALSは国の特定疾患に指定されていて、
公費による医療費の自己負担分の一部や全額の助成
を受けることが可能となっています。
さらに、ALSの原因追及の調査研究により、
良い療養ケアの推進が積極的に行われています。
(日本ALS協会WEBサイトより)
—–
お嬢さんが2人、息子さんが1人いらっしゃって、
長女さんに発達障害があり、
引きこもりと言ってもまだ若い。
お母さんの世話をしながら、
という状況で出会わせてもらいました。
介護保険、障害福祉サービス、医療を
総動員して、親戚の方にも時にお願いしながら、
子供達の将来的な事、お母さんが亡くなる
ということの受容をどのようにしていくか、
等全てを関係機関の方達と何度も何度も
時間をかけて話し合いながら、その中でも
本当に大事にしたかったのは、お母さんご本人
の「家で死にたい」つまり、
「どのように生きたいのか」
という意向を実現しようということです。
死期が迫っていても、前向きに取り組め、
それを共有できたことに、
すごく力を頂きました。
で、そのお母さんが亡くなられた後に
お嬢さんの担当もさせて頂いていました。
(インタビュー時点)
―親子2代に渡り、相談支援専門員
として関与されていますが、
そのようなケースは珍しいことですか?
(aruiru)
多分そこそこあることだと思います。
兄弟共に支援することも
私自身よく経験しています。
―主に相談支援専門員の仕事について
尋ねてきました。
そもそも福祉の分野で働き始めた
最初は介護職ですよね?
(aruiru)
はい、高齢者の在宅介護ですね。
―私がこのようにインタビューしてきて、
障害者の支援の仕事をされる方は、
心根が優しくて、何かしらの強い志を
持っていることが多いと感じます。
なぜ福祉の分野に入られ、
今の仕事に辿り着いたのか。
動機について
キャリアを関連づけたような感じで
お話をお願いします。
(aruiru)
そうですね。
福祉の世界で働きたいと思ったのは、
中学3年か高校1年くらいの頃です。
6人家族で母方の祖父母と同居していました。
まず祖父が癌になり、
終末で在宅で亡くなりました。
その間に祖母が脳梗塞でマヒになり、
認知症が出てきて、
祖父の何年か後に
やはり在宅で亡くなりました。
それを一人娘だった私の母が、
当時介護保険もない、
頼れるのは、
行政の保健師さんや医療分野の
往診してくれる先生くらいでした。
訪問看護師もいたのだと思いますが、
それを探す余裕が母にはありませんでした。
そのように親が介護する姿を
目の当たりにしてきて、
「これはちょっとおかしいのではないか」
と思っていました。
とうてい1人の人ができることではないし、
制度等、何がどこにあるのかの情報がなく、
母は孤独だったと思います。
しかも、今後高齢化が進む中、
母は専業主婦だったので看取りまで
ほぼ一人でできましたが、
働いている女性はとてもじゃないけど
できないだろうと感じました。
そこで、制度の内側に入って、
その担い手になりたいと思いました。
それに、祖父が
「家で死にたい。病院は絶対にいやだ」
という姿勢を闘病中に崩さなかった
ことも大きいです。
どのように死ぬかは選択できるんだ
と思いました。
それを考えると、
「どう死ぬかを考える=どう生きるか」
という気がして、死生学にも興味がありました。
―そういういきさつがあったから、
最初は介護の現場で働かれた?
(aruiru)
はい。
在宅福祉、特に終末期の方
の支援を選びました。
―ご自身の経験がストレートに
反映された形ですね?
(aruiru)
そうですね。
―高一で制度のことまで
考えていたというのは、早熟ですね。
(aruiru)
そうですか?
私は普通だと思いますけど 笑
当時バブルが弾けて不況だったので、
「自分は働いていくんだ!」
という職業意識は強かったと思います。
ー在宅介護の現場で働いてから、
相談支援専門員になっていく過程
はどのような感じだったのでしょうか?
(aruiru)
そうですね。
そんなに気にはしていませんでしたが、
国家資格のない状態で現場に飛び込み、
仕事で専門職と言われる方達と
話をさせて頂く中で、専門性は、
きっちりとした社会性・教養・知識
やスキルの裏付けがあってこそのモノ
だと感じました。
そんな方達の仕事ぶりに触れて、
経験は続けていれば積めますけど、
自己研鑽して、自分にも
そのような裏付けがあれば、
できることが広がっていく、
と思い、一つずつ資格取得していきました。
その過程で資格だけではいけない
という思いもありました。
高齢者の在宅だけでなく、
自分で実際に確かめないと
気が済まない性分なので、
施設でも働きました。
―現場主義ですね。
(aruiru)
これを現場主義と言うんですか(笑)?
で、入所、通所、在宅を高齢の方で
まず経験しました。
じゃぁ「これで福祉のプロと言えるのか?」
と自問自答して、
「いや、まだ足りない」と思いました。
一般的に人生を考える30歳くらいの時に、
苦手意識があることにチャレンジしよう
と思って、障害福祉の分野に行こうと。
―というと、障害者に対して、
苦手意識があったんですか?
(aruiru)
ありました。
―それは何なのでしょう?
(aruiru)
知らないってことですね。
私がそれまで生きてきた中で、
近所に知的障害の方とかいましたが、
日常生活で特に関わることなく、
生きてこられた。
ただ、知らないことには、
自分で何も対応すること
ができないということです。
―自分が福祉というフィールド
にいながら、何もできない無力感があり、
やってないことをやろうという時、
新たなチャレンジ対象に選んだ?
(aruiru)
はい。
障害福祉サービスの課題
―障害福祉の道に入り、大きく分けると、
在宅系、施設系、就労系のサービスがある中で
まず就労系に行かれたそうですね。
その後、
「自分の目で確かめないと気が済まない」
性分から、他のところでも
更に働かれたのですか?
(aruiru)
その後に、入所施設でも働きました。
―在宅系を経験するとこの業界を
制覇することになりますけど、
そちらには行かず、現職の支援センターで
相談支援専門員ですね?
(aruiru)
はい。
―福祉の専門職として、
様々な現場を総なめにされてますね。
(aruiru)
煙たがられるところもありますが(笑)、
転職が多いことで重宝がられる面はあります。
―キャリアを積まれて、現在も相談支援専門員として、
多数の障害者の方と日々関わられています。
その中で色んな事を考えていらっしゃると思います。
今現場で働いていて感じている課題
について教えて頂けますか?
(aruiru)
私は福祉の世界しか知らないので、他の業界が
どうなのか実のところは分かりません。
ただ、私のキャリアの中で、利用者さんへの対応や
家族さんとの関わりの中で当たり前にしていることが、
「どうも違うみたいだぞ」と感じる時があります。
―それは利用者さんやご家族の方から
何か指摘されたのでしょうか?
(aruiru)
いえ。
皆さん地域にお住まいなので、
ちょっとした困りごとがあったときに
「地域の力があればな」というところで
専門員として、「お願いできますでしょうか?」
という感じで動きます。
―困っている利用者さんのニーズを満たすために、
地域コミュニティの力を借りられないかと動く?
(aruiru)
はい。
そうすると、
「分からないから無理です」みたいな・・・。
―ご自身の「こうすればいいのに」
という部分と周りの地域の方達との
意識の共有がうまくいかない?
(aruiru)
そうですね。
無関心ではないけど、
どうすればいいか分からないという感じで。
―それは高齢者介護の世界から
障害福祉の世界に移る前のaruiruさんご自身が
そうだったように、「知らない」ことが課題ですよね?
(aruiru)
そうですね。
そこにどうアプローチできるかは、
日々考えています。
―ちなみに、ご自身が具体的に
実践されている事はありますか?
(aruiru)
なかなか個人として動ける立場でないので、
島本さんの活動を応援しています。
障害者総合支援法上に、
「自立支援協議会の設置」
が義務付けられていて、
地域の障害福祉事業所や特別支援学校、
珍しいところでは当事者も参加して、
住んでいる地域の「地域課題」を抽出し、
官民でその解決にむけて協議する場はあります。
神戸市は政令指定都市ですので
各区に設置されています。
で、就労・教育・防災など様々な部会があり、
事業所の現場職員が構成員となり活動しています。
地域の自治会や学校とのつながりもできてきて、
この活動はとても楽しいです。
地域ごとの特色もとてもよく出ています。
もちろん、高齢者分野の介護保険との連携で
地域包括支援センターなどと一緒に動くこともあります。
―今後更に高齢者が増え、高齢者が増えれば
障害者も増えますからね。
(aruiru)
ほんと共助、共生ですね。
―地域のことについては、
行政が「こうだ」と号令をかける
トップダウンでなく、ボトムアップ
でないと継続しないと私は思います。
(aruiru)
私の地域にはその部分のコーディネーターが
いるのかもしれないですけど、
私の不勉強もあってなかなか見えづらいです・・・
―いわゆるコミュニティソーシャルワーカー(CSW)※
のような存在ですね。
——
※地域福祉を進めるためにつくられた大阪発の専門職。
住民と協働で「制度のはざま」にある人たちを発見し、
その解決をめざす。
行政と住民をつなぐ役割も担う。(コトバンクより抜粋)
——
(aruiru)
そうですね。
―ところで、介護現場の人手不足が言われて久しいですが、
障害福祉の分野はどうでしょうか?
(aruiru)
同じく全然足りないです。
―介護現場で言われるような
キツイ労働環境なのでしょうか?
(aruiru)
そうですね。
でも、今まで働いてきて、
高齢者介護の離職と障害福祉の離職は
傾向が違うと感じます。
高齢の方が辞めるのが早いです。
将来への想い
―ここまで、障害福祉サービスを提供する側の話
をして頂きました。
逆に、相談支援専門員の立場から、
サービスの受け手である障害当事者側に
どのような課題があるとお感じでしょうか?
(aruiru)
当事者は、「~であれば、~ができる」
という発信をした方がいいと思います。
―私のようにね 笑。
(aruiru)
まだ全然足りてないです(笑)。
もっと力強くてもいいと思います。
人それぞれ障害特性が違うので、
やはり個人が障害のある中で、
どう生きていきたいかを語れることは
とても大切だと思います。
これは働くということだけでなく、
日常生活も含めた人生全てにおいてです。
―業界の人手不足の話がありました。
どうすれば人材を確保できるとお考えですか?
(aruiru)
やはり仕事の魅力を発信することですね。
福祉業界はアピールが下手やと思います。
結構閉じていると感じます。
自分の事業所を利用される障害者の皆さんが
「生きていく」には、社会との接点が必要です。
それを作っていくのが事業所の責任だと私は思います。
―自分たちのサービスが支援につながる
という自負を持ってアピールして
欲しいということですよね?
(aruiru)
はい。
で、試行錯誤していただきたいとも思いますし、
それを上手く地域に広報して欲しいですね。
―課題と対策について全体的に伺ってきましたが、
そこに赤松さんご自身は
どのように関与していきたいですか?
(aruiru)
直接的なことと間接的な事があります。
直接的には、やはり、社会との関わりを
感じて頂けるようにご本人に関与
し続けたいです。
もう少し具体的にいうと、
私なり、相談支援専門員という支援者が
関わることで、
「社会の構成員の一人だ」と
その方に感じて頂くことで
安心して暮らして欲しいです。
―つまり、その関係性がなければ、
地域や社会の中で孤立してしまう。
でも、一人でも外部の人で
コミュニケーションできる存在
がいることで、その方に、
「自分は社会の構成員だ」
と感じてもらえるように貢献したい、と。
地道で小さな一歩だけど、
そこをしっかりやりたい?
(aruiru)
そうですね。
その一歩がうまくいくと、
「行ける!」と自信を取り戻す
ケースが結構多くて、
自分で歩いて行けるようになる姿も
目にしています。
支援者間の連携に繋がる話でもあり、
その方の障害特性やその方の人となりを
キチンと理解して、それを支援者間で繋げて、
共有していきたいです。
―それぞれの支援者が関与する際に、
密接なコミュニケーションがとれれば、
その方も社会と繋がっている感覚が
より強くなっていきますよね?
(aruiru)
そうです、そうです。
そうすると、隣の家の人と挨拶ができたり、
ということに繋がってくる。
毎日地道に、こつこつと
積み重ねるしかないかなぁ。
あとは社会資源を作っていきたいですね。
勉強中です。
―最後に大きな質問です。
ずっと福祉の仕事をやってきて、
現在は相談の専門職で現場の現状についても
鋭い考察をされています。
この仕事を通してaruiruさんご自身が
実現したい夢や理想をお聞かせ頂けますか?
(aruiru)
とにかく「参加」です。
漠然としていますが、障害があっても、
参加を諦めなくていい社会になればと思っています。
ですので、同じ方向を向いている人たちと
力を合わせて、何かに
取り組みたいと思っています。
また、利用者とセットになる言葉としては、
(福祉サービスの)「支援者」があります。
ですが、「利用者」という呼称が
なくなればいいとも思います。
施設や病院があるから自分には無関係と考える
方もいらっしゃるかもしれませんが、
本当は世の中の人同士が
お互いに関心を持ち合えることが普通になる。
これが理想です。
そうすれば、地域で無事に生きられます。
毎日の生活の流れの中での
「自己選択、自己決定」
ができることを大切にしたいです。
皆さんの日常に当てはめて考えてみると、
例えば、自分で病院に行くのが辛いくらい
体調が悪い際、タクシーで行こうと電話をかけ、
持ち物の準備だけする。
実際にタクシーで病院に行き、
医師に症状を伝え、診察を受ける。
会計を済まし、薬をもらい、帰宅する。
こうした一連の「認識」・「判断」・「行為」
・「伝達」の「自己決定」が
障害によって妨げられないように環境を
整えることに関わり続けたいです。
そのために必要になる
相談支援専門員の専門性について、
日々考えています。
私は人間性・社会性・専門知識だと思っています。
名称に専門員と冠があるように、
もちろん専門知識は必要です。
でも、制度の枠組みは法律で定められていますから、
知識はついてきます。
「いやいや、障害の理解や知識は必要でしょ?」
と言われるかもしれません。
確かにどのような障害で特性があるか
というのは基礎の部分としては必要です。
でも、ひとりひとりほんとに違います。
その人の生きづらさや、生き方、
望みや在りようは全く違う。
だから重要なのは、
今、目の前にいらっしゃる当事者と
いかに語り合えるか、なんです。
大事にしているのは、
障害のある○○さんではなく、
○○さんと関係性を築くことです。
つまり、「今、目の前の当事者に最大限の関心を持つこと」です。