「8050」問題とは、ひきこもりの若者が長期化し親も高齢化して、収入や介護に関しての問題が発生していることです。これが80代の親と50代の子の親子関係での問題であることから「8050問題」と言われています。
①ある勉強会でのできごと
以前ある有名な先生のひきこもり勉強会に参加したことがあります。早く会場に到着したのにすでに満席でした。多数を占める参加者の様子から8050問題をひしひしと感じました。
先生のお話しは実践に基づくもので、多くの若者がその施設を経由して社会復帰を果たしたという事実は参加者を勇気づけるものでした。
②「どこかで対応をまちがえたから」
ただ、最後の質疑応答での、二十年ひきこもっている子どもを持つ相談者への回答が今もこころに突き刺さっています。その質問は「部屋から出ない子どもに親としてどうしていったらいいか。」というものでした。
「適切な時に適切な対応ができていればそんな長期にひきこもりにはならない。そんなに長引くのはどこかで対応を間違えたから。」というのが先生のお答えでした。
「あなたの子育ては間違っていた」という意味に感じてしまって心が痛みました。
不登校やひきこもりの子を抱えている親御さんの多くは子どもの社会復帰のために熱心です。ひきこもり関連の本を読んだり、色々な会や講演会に参加され役立つ情報を集めていらっしゃいます。
きっと質問された母親も、今日まで何もせずに日々過ごされていたわけではないと思います。
③「放置」「ずれたタイミング」「過保護」「甘やかし」
あたたかく見守っていれば「放置」と言われ、機嫌がいい時に声をかければ「タイミングが違う」と言われ、親身なれば「過保護」と言われ、そしてやさしくすると「甘やかすからそんなことになる」と社会から圧力をかけられる。
本人ももちろん大変ですが、それを支える家族にもこのような有形無形のプレッシャーは続くのです。
先生のご回答は正論であるだけに複雑でした。発言された保護者の今までの頑張りを否定されたような感覚になったからです。
「どうすればよかったのか」の分析ももちろん大事ですが、「これからどうすればいいのか」を一緒に考えていくことのほうが建設的だし、むしろ頑張れるのに…と感じました。
8050問題に政府も重い腰を上げて取り組むようになりました。が、ずっと関わってきた者にとっては、「何を今さら…」という感覚は拭えません。
④全ての人が自分らしく生きられるために
長い歴史のある不登校支援と違い、大人のひきこもり支援への実践の蓄積はこれからです。これからも全ての人が自分らしく生きられるために、「何ができるか」「何が必要なのか」を一緒に考えていけたらと願っています。
私は宝塚発達心理ラボの仲間たちと「大人のひきこもり女子会 in 宝塚」という集まりを偶数月に開催しています。参加される方々が合わせ持つ繊細過ぎるほどの優しさに、毎回スタッフのほうがいつも元気をもらっています。