できることを増やす努力はしてそれでもなおできない部分は人にお願いすれば良い
脳卒中で片麻痺の後遺症がある場合、リハビリでの回復を諦めず、多大なる時間を使い、
高い身体能力を取り戻すことに成功する方がいらっしゃいます。
他方で、私のように回復にある程度見切りをつけ、残存能力を駆使して
工夫によりできることを増やす人もいます。
これはどちらが正しいという話ではありません。
さて、2回に渡って、後者の立場で私の考えをご紹介しています。
今回は最近できるようになった動作を実演動画でご紹介しています。
これは本当に試行錯誤の末、獲得した動作で
まさしく現状使える右腕のみでできることの限界です。
限界以上のことをどうするのかが今回のテーマです。
関連動画「残存能力の活用〜まひ側の爪切り〜」(3分23秒)
動画文字通訳:残存能力を生かしてできる
ことを増やすというテーマでブログを書いています。
できることを増やしてきたが、身体障害による制約で限界は存在する。
それに直面した時にどうするか。
この動画では、残存能力でできることの限界に挑戦してできるようになった
最新の動作を紹介します。
このブログ下部にも関連動画として掲載している
別の動画で以前使える方の右手の爪きりを自助具を
使って行う実演を紹介しました。
今回は逆の麻痺している左手の爪切りを紹介します。
左手が不自由でも右手が自由ならそれは簡単にできるのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、これは結構難しいです。
というのも、麻痺における身体の緊張のパターンというのがあるからです。
その影響で麻痺側の腕が曲がってくる筋肉の緊張があります。
ですから、その中で独力で麻痺した左手の爪を切ることはこれまでできませんでした。
最近できる方法を見つけました。
1日のほとんどを座って過ごす仕事用のいすの(右側の)
肘置きに麻痺した左手を置きます。
~2分40秒過ぎから実演~
(ただし今回は自由な右手にスマートフォンを持って撮影
しているので実際に切る部分までは収録しておりません)~
肘置きから指が少し出るような感じで左手を置きます。
すると、指が宙にある形になるので
スマートフォンの代わりに爪切りを
持てば、カット可能というわけです。
このように少しずつできることを増やしています。
とはいえ、いくら知恵を絞っても無理な事はあります。
その際の対応について、私の考えを結論から申し上げます。
「周りの人に頼る」です。
現に私は仕事の事務作業の一部は 丸投げしています。
また、移動も家族にサポートしてもらっています。
ここは完全に割り切っています。
私は 細かいところにこだわるので
健康なら自分で全てやりたい性分です。
しかし、それを今の身体でやろうとすることは賢明だと考えていません。
限られた時間のなかで、無理して自分ですべての作業
をやろうとすればどうなるか。
多くの時間を費やさねばなりません。
これは、命を削る事だと私は考えます。
ならば、あえて周りに甘えた方がいいと思うのです。
ただし、これには前提があります。
そう、「自分でやれることはやっている」
という姿勢が周りに伝わっていることです。
これは口で言うのでなく、自分の行動を周りが見て、周りの人たちが「こいつの頼みなら聞いてやろう」
となるのがベストでしょう。
私の活動の理念の根底には「バリアフリーの世の中になれば、
チャレンジドのみならず、多くの人が暮らしやすくなる」という考えがあります。
しかし、仮にチャレンジドが「障害者だから、やってもらって当たり前」という意識を
持ってしまうと、バリアフリー社会の実現は遠のくでしょう。
まとめます。
できることを増やす努力はして
それでもなおできない部分は
人にお願いすれば良いと思います。
念のため付言すると、これは全ての人に最適とは限りません。
私のようにはっきりと自分の要望を伝えるのは苦手という方もいらっしゃるでしょうし、
聴覚障害や内部障害のような「見えない障害」がある場合、周りの人がどういうサポートをすればいいか、
理解が進んでいないところもあるので、前述の姿勢を貫こうとすると、
より当事者側から明確に伝える必要があります。
ここは当事者が伝える努力と共に、周りの人の理解する努力が欠かせません
お互いが歩み寄る姿勢が大切です
関連動画「脳卒中の後遺症との上手な付き合い方~自助具を活用しての爪切り実演~」(3分)
補足:動画内で先に説明編をご覧頂きたい、
と述べていますが、実演編のみで十分です。
文字通訳:右手しか使えない私が右手の爪を切るという離れ業をどのように行うのか、の紹介です。
2枚の板の片方に普通の爪切りを埋め込み、 もう片方に金属の取っ手のようなものを付けて、
ちょうつがいで繋ぎ合わせた自助具と 呼ばれる道具を使っての実演です。
この道具は作業療法士(OT)という 専門職の方が作ってくださいました。
どのようにして爪が切れるかは映像のみで 伝わるかと思います。