<音大生当事者ライター:西濱優衣香>
<発達凸凹ちゃんママ:りょう育ママ>
実施日:2020年8月23日@Zoom
ライターチームに新規加入した発達障害当事者である西濱さんと
お話をしてみたいとわたしが熱烈アピールして実現した今回のオンライン(ZOOM)対談。
予め対談するテーマをわたしからピックアップさせてもらいました。
- 特性と個性のちがい
- 障害告知
- APD(聴覚処理障害) ※1
※1 聴覚情報処理障害=APD(Auditory Processing Disorder)
聴力に問題はなく音は聞こえているけれど、人の話し声(音声)を情報として認知するのが困難な状態。
耳から入ってきた音の情報を脳で処理してことばとして理解する際に、なんからの障害が生じる状態
(APD「音は聞こえているのに 聞きとれない」人たち ―聴覚情報処理障害(APD)とうまくつきあう方法 / 小渕 千絵 (著) P.3より引用)
対談前に…
対談するにあたって、テーマを決めておいた方が話をしやすいかと思いました。
ママとして気になるのは、「発達障害当事者がどのように感じているのか?」です。
わが子は、まだ幼くて自分の想いを言葉にするのは かなりむずかしい。
大人の発達障害の方が子どもの時にどう思っていたかを聞きたかったのです。
特に障害告知については、多くの当事者が【小学生のころに知りたかった】とお話しされています。その辺りも対談で質問してみました。
また、多くの方が聞きなれないAPDについては西濱さんがブログで発信していることから質問に入れました。
では、対談のはじまりです。
ハッタツ女子と発達凸凹ちゃんを育てるママのぶっちゃけトーク
①特性と個性のちがい
(西濱)
本人が生きづらさを感じているか否か。
環境に非常に左右されると思っている。
定型発達の人にとっても環境は大切だと思いますが
発達障害者の場合は死活問題。
周りの人の理解があるか否かでもかわってくると思いますし
本人が障害ってとらえるのは嫌だと思っていたら「個性」でもいいし
本人が生きづらさを抱えていてもう死にたいと思っているのなら、
「障害だから気にすることないよ」と
「障害」ってとらえて支援をした方が良い。
人によって変わってくるんじゃないかな?
本人の生きづらさを周囲が理解するには?
(西濱)
自分は何が苦手か・困り感を把握し、伝える。
口で伝えるのが苦手な人は、前もって紙やスマホを使って、文字で周囲の人に伝えてみる。
どう思います?
(りょう育ママ)
わたしは、子どもを育てている側なので、育てにくいとまず感じました。
小さい頃の記憶ってないじゃないですか?
その時に本人がいつ「生きづらさ」を感じるようになるんでしょう?
情緒・精神が発達していない段階の生きにくさを
10歳の壁 ※2に当たるまで本人はどう感じているのか聞きたくて…
(西濱)
小学校低学年のときには、自分だけ手先が不器用で
「あれ?おかしいぞ」と思っった。
お菓子の袋があけられないし
運動音痴すぎて迷惑かけて怒らせてしまうこともあった。
一番生きづらさを感じたのは10歳の壁 ※2
女子の高度な会話についていけなくなった
少なくとも低学年から違和感を感じていた。
※2 10歳の壁
9歳以降の小学校高学年の時期には、幼児期を離れ、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。
対象との間に 距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能 となる。
自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著 になる(いわゆる「9歳の壁」 ) 。
身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期 であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識 を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。
また、集団の規則を理解して、集団活動に 主体的に関与したり、遊びなどでは自分たちで決まりを作り、ルールを守るようになる 一方、ギャングエイジとも言われるこの時期は、閉鎖的な子どもの仲間集団 が発生し、付和雷同的な行動が見られる。
(引用元:文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題)
(りょう育ママ)
発達障害は目に見えにくいので、よく「個性」と言われたりします。
また、障害・障碍・障がいなどの漢字の議論がある。
漢字とか呼び名で
気づきにくさを気づきやすさにかえたい
生きづらさを考えているときに「障害」って話すと周囲に理解してもらいやすい?
(西濱)
障害年金など公的な支援を受けやすくなり、診断名があるといいなと思います。
②障害告知について
(りょう育ママ)
診断名を子どもの時に受け入れるのはむずかしい、とわたしは思っています。
どのタイミングで言ってほしいですか?
例えば…
10歳の壁(※2)に当たった時、母親から
「実は、あなたの生きづらさは、これが関係しているんだよ」
「それは、いいんだよ。あなたはあなたのままで大丈夫」と言ってほしかったですか?
それとも、情報を自分で検索できるようになった時?
思春期では、ふれてほしくない時?
いろんな告知のタイミングがあったと思いますが、発達障害のことを知りたかったですか?それとも知りたくなかったですか?
(西濱)
当時自分はなんで障害者なんだ? 一生告知してほしくなかったと思っていました。
結果としてはわかってよかった。
わからなかったら、なんでこんなにできないことが多いんだと暗いトンネルを一人で歩いていた気分になっていたので、
自分に発達障害があるとわたしの場合は中学生でわかったので、不可能だけど小学生の時に知っていればもっとラクだったかもしれない。
(りょう育ママ)
告知されて受け入れるのに時間がかかったのは、中学生だったからというのもありますか?
(西濱)
ちょうど周りの目を気にし始めた年齢だった。
特別支援学級に通っている子を馬鹿にしている子を何回も見てきた。
もし、わたしが支援学級に通っていて「障害を持つことは悪いことではないんだよ」
と教育を受けていれば、ここまで苦しむことはなかったかもしれない。
わたし自身は、普通に会話していたら…ある日急に告知された感じです。
(りょう育ママ)
わが子の診断は、わたしが知っているだけでいいと考えている。言わなくても生きていけると思っているので。
公的な支援を入れているし…
気づいたら言っておいでくらいな感覚。
「わたしの子どもが(告知したからと言って)かわるわけではないし
なにがあっても私の子供だから大丈夫だよ」と思っています。
3人いる中で誰が一番に気づいてくるのだろう?と思っています。
女子は精神年齢がたかい。凸凹ちゃんは、幼い子が多い。「あの子ちょっとちがう」ってなんとなく気づく。
そうなったときにいじめ・無視・仲間外れにされるなどはよくある。
女子の方が気づきにくい障害でもある。おとなしいと自分から助けを求められない。
ADHDだと男子の方が気づきやすい。けんかになって先生も気づく。
周りがバリアになっているんではないのか?
(りょう育ママ)
医療モデルから社会モデルに変わってきている。※3
※3
医療モデル:障害は、病気や外傷から生じる問題であり、医療を必要とするものである
社会モデル:障害は主に社会によってつくられた障害者の社会への統合の問題である。障害は障害者ではなく社会が作り出しているという考え方
(発達障害事典 / 日本LD学会 (編集) P.578より)
例えば、学校っていうところに行くとしんどい。家にいるとしんどくないんです。
自分にとって過ごしやすい環境だから。
学校だと一斉授業。ディスカッション・グループワークとか集団で何かをしなければならない。
社会性が育っていない子たちが配慮もなくなぜしなければならない?
ここがしんどいと思っていた。
当事者は、支援を受けられるのであれば
「それあんたのいいとこやん」
診断名がおりていても「いいところはいっぱいある」
凸凹は、ちがっていてユニーク
聴覚処理障害
(りょう育ママ)
わが子は、ADHDの不注意があって話を聞いていない。
聴覚に問題ないけど、話をきいていない。あきらかに違う方向をむいているんです。
真正面で向かい合わせではなしてても
「え?」って言われたり
「わかった?」と聞くと
「わかった」と答えるので
「なにがわかったの?」と返すと「わからん」
なにかちょっと違うなと考えていた。
APDに気づくきっかけ
(西濱)
大人になってくるにつれてわかってくる。
体育の先生が授業中に説明をするけど、言葉を聞き取りにくい。
家で困るのはグツグツ料理の音がなっていると聞こえにくい。
空調設備の稼働音がうるさい。
窓を開けている・外の音が気になって声が聞こえない。
ネットで知ったカクテルパーティ効果(※4)が機能していないと自分で納得した。
※4 カクテルパーティ効果
脳は、一度にいろいろな音がたくさん入ってくると、そこから選んで一部だけを大きくして聞き取る能力がある。
膨大な情報を処理するために活動を偏重させ、選択して処理をおこなう効率的な働き方
(APD「音は聞こえているのに 聞きとれない」人たち ―聴覚情報処理障害(APD)とうまくつきあう方法 / 小渕 千絵 (著) P.74より引用)
(りょう育ママ)
わが子も勉強の時には、集中したいと言って自らイヤーマフを使ってます。
発達障害とAPD
(西濱)
ASD(自閉スペクトラム症)※5 +ADHD(注意欠如/多動症)※5 は、19歳で診断。
APDは未診断。おそらくあるんじゃないかと感じている
ネットを通してお医者さんに「こういうことで困っている」と母が相談(中学時)
「APDかもしれない。発達障害もあるかもしれないし、一度検査してみてください」と言われたことがきっかけです。
※5 ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如/多動症)に関しては
「発達障害って、なに?」の記事をご参照くださいませ
(りょう育ママ)
APDは、発達系の方がなりやすいんですか?
(西濱)
定型発達の人もなるかもしれない。心理的要因もある。
聞き取れない→焦る→聞き取れるものも聞き取りにくくなっちゃうことがよくある。
(りょう育ママ)
しゃべっている人に、どう対応してほしいですか?
(西濱)
静かな場所・ゆっくりしゃべる。
なかなかむずかしいけど、イライラされると「ごめんなさい」と思って余計聞きとれなくなる。
(りょう育ママ)
大きな声・マシンガントークになる人は苦手ですか?
(西濱)
早口・大量の指示は苦手。授業でもよく困った。
(りょう育ママ)
では、一気に話をされると最初か最後どちらが記憶として残りますか?
(西濱)
最後。最新の記憶だけ残っている感じです。
(りょう育ママ)
なるほど。わが子も大量の指示を口頭で、というのが苦手です。
どちらかというと視覚優位なので。
一つの意味は一つの文章と思って、わたしは話をしています。
そうでないと聞き取れないし、伝わらないので、わたしが悲しくなるので
実は、わたしは突発性難聴なんです。
右耳が外で話をすると聞き取りにくいんです。
だから、車が右側を走っているときには
自分が右側に立つようにしています。
聞こえないときの工夫は?
例えば
外でちょっと聞き取りにくい環境。お友達と2人以上のグループで話をしているときに聞き取りにくいことがあったらどうしていますか?
(西濱)
後で聞くか
あんまりよくない方法だと思うけど適当に愛想笑いしてごまかす
愛想笑いしていて違和感ありまくりだけど、もめることはありません。
(りょう育ママ)
笑っておく方が得?
(西濱)
雑談だったらいいけど。必要な情報を聞き取れなかったら、LINEで確認するようにしている。
急に声をかけられることについて
話しかけられたとき頭の中でちがうことを考えていることはありますか?
例)
ゲームで頭いっぱいのときにわたしが「洗濯物取り込んでくるわ」と話しても、聞いていない。
(西濱)
ちがうことを考えているときにいきないり声をかけられると
「え?なんて言った?」
と最初の声が聞き取れないことはよくあります。
(りょう育ママ)
その時は、肩をたたいても大丈夫?どんなふうに声を掛けたら一番スムーズ?
子どもがびくっとなってしまい、不本意に驚かせてごめんと思うことがあった。
名前を呼んでも聞いていない
目の前で手をかざしたり
手をパチンとしたりしてから
話しかけないと聞いていないことが多い。
でも、それが嫌じゃないのかな?と思っている。
(西濱)
前からだったら、わたしはわかりやすい
(りょう育ママ)
自分がたのしいことを考えているのを中断されると嫌じゃないですか?
(西濱)
小さい子だったら嫌だったりするのかな?と。
ココから脱線しました。いわゆる雑談へ(笑)
小さい頃の話やお母さんとの思い出話、学童の話もしてくださいました。
個人情報も含まれているので、割愛いたします。
特性と個性について(改めて)
(りょう育ママ)
二次障害が起きない限り、診断名がおりてない世代のわたしたち。
LDの人だと書けなくても技術系で仕事に生かしている人もいた。
今はメディアでも取り上げられる機会が多くなった。
(西濱)
教科書読めなかったり
多動だな…
色んなパターンがあるけど、順応できればオトナになるんだと思います。
(りょう育ママ)
発達障害は、よくグラデーションであらわされますよね。
仕事でこだわる所はわたしにもあります。これをASDの「こだわり」とするのか?
そうなると、定型発達の人にも一つくらいドキッとするポイントがあるのかな?と思います。
定型と発達の区別はできないんじゃないの?と思って特性と個性にどうわけるの?と思えてきて…
不思議な気持ちになりました。
小さいころから特性や個性を説明していくべきだけど、わたしでは言語化できない。
わたしの中では、個性という言葉があわない。特性でもない。
しんどいのに個性と言われると納得せざるを得ない。
「自分がちょっと遠慮しないといけない」
「個性だから我慢しないと」
「個性だから迷惑かけないようにしなきゃ」
特性=障害がかかってきているイメージ。
どちらでもない言葉なんだろうな。
人をあらわすのにこの言葉は正しいのかどうか?
Twitterでも熱い議論が交わされているから、わかりやすい新しい言葉がうまれないかな。
(西濱)
【困っている人がいたら助けあう】でいいじゃないかなと思います。
もう議論はいいよと思ったりする。
対談を終えて
(りょう育ママ)
「困っている人がいたら助けあう」本当にこれだけでいいと思いました。
また、今回の対談を通して
いじめをうけても
フラッシュバック(※6)を起こしていても
自分のことを発信できる大人になるんだと希望が持てました。
※6 フラッシュバック
意図的に思い出そうとしていないのにもかかわらず、外傷体験を受けた時の感覚、感情、生理的状態などがよみがえり、その出来事があたかも起こっているかのように振る舞うこと。
これらのことがつらい夢として再現される場合もあるし、年少の子どもの場合、ごっこ遊びなどの中で心的外傷に関連した出来事を再演することもある
(発達障害事典 / 日本LD学会 (編集) P.376より)
(西濱)
発達障害と関係のある方と話をすることはめったにない。貴重なお話をありがとうございました。
自分はこう考えていたんだなと再確認の機会になった。
最後に
今回、はじめて対談をしました。わたしが質問しながら、PCにメモを入力していて画面を見れない時間もありましたが、
オンラインでもスムーズにお話ができたと思います。
ライターチーム内でだれかと対談してほしいとご希望があれば、ぜひバリアフリーチャレンジまでご連絡くださいませ。