障害×ICT・IoTでできることがある

私と同病の脳卒中で倒れ、そこから車いすユーザーならではの視点を生かして、
様々なビジネスを展開されている(株)グローバルITネット代表取締役社長三木谷毅さん

インタビューのため、三木谷さんが拠点に仕事をされているグランフロント大阪を訪問。

(20歳ほど年上ですが)印象として颯爽と自走式車いすをこいで三木谷さんが1階ロビーに登場。
二人並んで車いすをこぎ、階上のシェアオフィスのミーティングルームへ。
私が颯爽と感じたのは、脳卒中で半身まひになり、自走式車いすを操作する場合、まひのない側の手と
足でこぐのが一般的なのに、三木谷さんは両腕でこいでいたからです。

倒れて半月後のある朝に、不思議な感覚があり、奇跡的にまひした手が動き出したそうです。

 

震災で感じた地域の重要性

神戸市出身の三木谷さんは大学卒業後、
システムエンジニアリング企業CSKで、
技術、営業から管理部門まで幅広く経験を積まれる中で
阪神淡路大震災で被災。
その経験がその後の生き方に大きな影響を与えたそうです。

起業の意識は高くなかったそうですが、お父様の病気で布団屋の家業を継いだことと
震災で地域の重要性を感じていたことが、
地域に貢献したいという思いに繋がり、起業されます。

今までにないものを提示する

三木谷:「ITを使って暮らしやすい地域にできるんちゃうか?」
と父に言われたことが後押しになり、自分のやってきたITをを生かそうと。

布団はこれからあまり売れないので、引き継いだ会社を株式会社三木谷と改め、
ベンチャー育成に取り組みました。
そして、ちょうど地域密着のSNSをやっていた頃に倒れました。

4か月の入院を経て退院し、車いすでの移動に伴う不自由を感じつつ、
バリアフリーマップの作成に取り組まれます。
また、アプリ「レットミーノウ」の開発(似た仕組みのものを参考までにリンクで貼っています)

など、これまでに培われたICTと障害者としての感性を組み合わせた
製品・サービスの開発に取り組まれます。
この辺は、障害は同じでも「モノづくり」に直接関わったことのない
私にはない発想でした。
中でも、特に注力されている位置連動型お悩み解決サービスについては、
私にも旗を振って欲しいという提案がありました。
基本的にビーコン(※大まかにはリンクで十分かと思います)
を使って、人に聞いたり、検索に頼らなくてもその場で、
困ることの情報が蓄積された端末が先回りして、こちらの端末と
通信することで情報を取れる仕組みです。

IoT(モノのインターネット)の活用例です。
個人的には、人に聞かなくて用が足りる世の中というのは本当に心地がいいのか、

とも思います。これはどっちが善いというのはなく価値観の話です。

これについて三木谷さんはとても強烈な体験をされていて、
それに基づき、製品を一つ開発した話をしてくれました。

多目的トイレの記事に書いたノックについての製品を開発れたのは三木谷さんです。
ある時車いすの三木谷さんが使用中になっていたトイレの個室
の扉をノックをされたそうです。

すると、使用中の人が出てきて、車いすの三木谷さん
を見て、一瞬気まずい顔をして、「待っとけ!!」
と怒鳴ったそうです。

それで、ビーコンを利用して、外で待っている人がいることが
中の人に伝わる装置を作ったところ、引き合いがあったそうです。

島本:私はノックしますが、ノックしづらい人
が「待っている」と伝えられる手段になるわけですね。

 

結局、結局怒鳴るような人はいるでしょうが、

三木谷さんの開発者としてのプライドは高く、
待ってると伝えた後、中の人がどうするかは次の話。

これまでノックするか、声を出すかしかなかったところに

新たな伝達手段ができることが大切
すると、周りは動き出す、と。

さて、官に対しては、既に障害者差別解消法の施行に合わせ、
サービスを提案されています。
更に、今回の面会では産の中でも全国の鉄道駅に前述のビーコンを設置して
新たなインフラにする部分で士業の方々にご協力をお願いしたい
ということでした。
1台の設置費用約1万円を負担する代わりに、
事務所情報などの発信ができるという提案でした。

そのお話は広告効果が大きいとは考えにくいと率直に申し上げると、
単なる広告と考えると直接の効果はほとんどありません、

これは新たなインフラ整備です。「今までにないものを提示する」

そこに行政書士が関与しているということで、
工夫すれば、可能性は広がるとおっしゃいました。

私が今思いつくものでは、士業の有志で一定の地域をカバーして、
新たな動きをしている士業がいるという切り口でプレスリリースを打ち、
メディアに露出するなどでしょうか。
「ないものを創る」

この言葉を三木谷さんがインタビュー中で、
繰り返されたのが印象的でした。

技術者としてキャリアを積まれたからこその言葉でしょう。
この提案も、ただ、お困りごとの情報が出る端末を設置というのでは
ぼやけてしまうところ、障害者差別解消法施行のタイミングをとらえ、
自身が車いすユーザーであることから、最初に出す情報は、
多目的トイレやエレベーターの位置などに絞る。
そして、全国でも珍しい車いすで活動する30代の士業である私
に提案されたあたりは、非常に合理的で、経営者はこう動くというのを

見せて頂いた気がします。

島本:ス トレートに言うと障害者の視点を生かせば、
ビジネスになると思われますか?

三木谷:CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)
という考えがあります。
ボランティアではなく、社会貢献の目標がまずある。
その上でそこに対応できる価値を自分が持って、
儲ける考え方です。

※CSVの解釈については色々議論があるようですが、
ここでは三木谷さんの発言をそのまま引用しています。

福祉で儲けて別にええやん。福祉の世界で金儲けを言うと、

え?みたいな反応は一部に未だにあるが、
ビジネスの世界では当然儲けないと続かない。

だから、バリアフリーで儲けたい。
障害があるから健康な人には見えないものが見える。
それを商品化していくことを考えている人は少ないから、
障害×ICT・IoTでできることがある。

車いすの生活がわかるから、技術を使って具体的に提示する。

命ある間に暮らしやすい地域の実現のお手伝いを少しでもしたい。

再発のことを考えるので、3年後とか、5年後にこうと考えにくい。
命ある限りと思うから動くスピードが速くなった。
バリアフリーは商機になるし、可哀そうで買ってくれる時代ではない。

島本:最後に、チャレンジドとしてビジネスで成功したい
と考えている人にメッセージ、アドバイスをお願いします。
三木谷:チャンスと思えるかどうかだけ。
だからハートを強く持ち、前へ。今はやりやすい時代です。

投稿者プロフィール

島本 昌浩
島本 昌浩
バリアフリーチャレンジ!代表
challenged-view編集長