【Inaoka Studio=Concert School Recording Workshop】
今回は、ずっとお話を聞いてみたかった方のお一人、音楽療法士の稲岡大介先生に取材させていただきました。
作曲家として、また日本中でハンマーダルシマーの演奏をされています。
スタジオに入ると自然無垢の木の香りが漂います。バイオリン、ハープ、フルート、ギターなど多くの演奏家が訪れています。
録音や編曲に必要な専門の機器も完備しています。
アイリッシュ音楽の愛好家や専門家が集まるセッションに筆者も参加し、ティンホイッスルを少しだけ吹かせて頂きました。
稲岡先生は学会や音楽療法の講習会では出会えない方だと感じます。
バリアフリーコンサート
ミュージックフィールズが主催する【バリアフリーコンサート】へ2度足を運びました。
演奏者である障害者の方々がとっても楽しそうなんです。
作詞作曲は演奏者である障害者の方々が稲岡先生や先生と一緒に活動するプロの方々とされていてさすが質が高い。
例えば、阪急電車が好きなメンバーが作詞して生まれた「阪急電車の歌」一度聴けば鮮明な印象が残る明るい曲です。
コンサートの司会も沖縄からその日のために宝塚へお越しになります。
会場の皆さんは曲の合間のトークもワハハと楽しんでいて笑いが絶えません。
稲岡先生とメンバーが作り出すコンサートの雰囲気がとっても温かいです。
ユーモアがあってとっても楽しく親しみやすい。
CDが発売されているので、関心のある方は是非聴いてみてください。
フィールズの森 – 稲岡大介(ハンマーダルシマー奏者/作曲家)ホームページ (inaokadaisuke.net)
工房見学レポート
そんな素敵な先生から今回は音楽と福祉についてお話を聞くことができ、さらに工房へお邪魔させて頂きました。
取材テーマ①音楽と福祉について
平日は日本国内80名の生徒のレッスンがあり、その合間にミュージックフィールズの練習や高齢者の福祉サービスに慰問演奏へ行く。
「自分の中では音楽と福祉は絶対という思いがあった」と話し、実母が難病の障害者であったことから、
高校卒業後に福祉の大学に進学するか音楽の道かどちらか悩んだところ、音楽療法を知った。
「やりたいことが一致した。母には生きがいを持ってほしかった」
という思いがあり、ミュージックフィールズのメンバーには、活動を通していきがいを抱いてくれるように心掛けている。
音楽療法士に求められる技術
現場で音楽を弾くとき、利用者の声域にあった伴奏をするために移調*の技術が必要で重要である。
※「移調」( Excite 辞書より抜粋)
楽曲全体を旋律や和声の構成音相互の音程関係を変えずに,別の高さに移すこと。
たとえばヘ長調の曲を長3度高くしてイ長調に,変ホ短調の曲を短2度低くしてニ短調にすること。
楽譜を見てコードを数字で把握する。例えばⅠのコードは1とふり、Ⅴのコードは5とふっておく。
そうすると、突然移調が必要になったとき、数字をみたらどの調でも弾くことが可能になる。
移調はとても大事なので、自身が得意なコードを3つ持つこともすすめる。
加えて、自分が好きな曲を譜面がなくても移調ができる練習をする。
コードは知っている方が技術の幅が広がる。
音の響きやベースの流れが綺麗になる。曲は半音で下ったりシンコペーション*を使う。
※「シンコペーション」(goo国語辞書より抜粋)
音楽で、強拍と弱拍の位置を本来の場所からずらしてリズムに変化を与えること。
シンコペーションを使えば、メロディーだけでリズムが刻める。
取材テーマ②レッスン以上のものを生徒に提供する
筆者がミュージックフィールズのコンサートに伺った際、観客もメンバーもとっても楽しそうだった。
あの場をつくりりだせるのは、「レッスン以上のものを提供する先生のポリシーですよね」と話すと、
「こちら側がハッピーオーラを発信しないと、聴いている人はハッピーにならない」
ミュージックフィールズのメンバーがハッピーになれる環境づくりが大切。
演奏以外の曲の合間に冗談を交えたり、メンバーと和気あいあいな一面もステージに欠かせない。
「応援してくれる方がいるし、ありがたい」というように、
多くの人々がミュージックフィールズを応援している。
取材テーマ③工房【Inaoka Strings】
工房では稲岡先生と職人の男性が日本製「ハンドメイドダルシマー」を生産している。
一台一台がオリジナルで、丁寧に作り上げられ、専用の工具と木材が部屋一杯に置かれている。
ダルシマーの図面が広がる横に、作成途中のハンマーが並んでいた。
演奏者のこだわりにあわせて長さや軽さを調整し、全てハンドメイドとのこと。
ダルシマーの型によってハードメープルや、スプルース、フィンランドバーチ合版といった材木が異なり、
音質や音階を選択することが可能だ。「同じ木でも一つ一つ音が違うんです」と話す男性。
年輪は勿論、春夏秋冬のどの季節で育ったかによって音が変わる。
「木を削ってどのように音を綺麗にだせるか」が職人の技で、おもしろみがあると話す。
稲岡先生は過去に800回超のコンサート実績があり、10枚程のCD制作をされています。
作曲家としてのデビューは、19歳の時に長野県のコンテストで作品がテーマ曲に抜擢されたことがきっかけ。
音楽家としての才能は勿論、情熱ある先生だから作り出せる音楽療法の匠の技に触れることができました。
稲岡大介(ハンマーダルシマー)
アイルランド音楽、クラシック、日本の叙情曲、オリジナル曲などジャンルを越えた演奏活動を行う関西屈指のダルシマー奏者。4歳からピアノを始める。名古屋フィルハーモニー交響楽団所属ピアニスト、堀内久世氏にピアノを師事。大阪スクールオブミュージック専門学校作曲学科に在籍中「人と自然のふれあいフェスタ2000in長野」のテーマ曲に作品が採用され作曲家としてデビュー。デビュー後、学生と平行しながら音楽制作会社所属作曲家兼ピアニストとなる。ダルシマーとは専門学校生時代に出会い、その美しい音色に魅了され勉強を始める。
ダルシマーのCD「ノスタルジア」「ハーツ・イーズ」「イ・フォンド・キス」を始め、これまでに10枚のCDをリリース及びプロデュース。
2012年イタリアで開催された『世界音楽フェスティバル』に日本代表として参加。
メディアにはNHKテレビ「この人に聞く」、KBS京都テレビ「ぽじポジたまご」、NHKFM「ゴンチチ世界の快適音楽セレクション」KBS京都ラジオ「妹尾和夫のパラダイス京都」に出演。
2017年、作曲家としてサンミュージックと契約。
1979年生まれ。兵庫県川西市出身。兵庫県宝塚市在住。
■http://www.inaokadaisuke.net/
投稿者プロフィール
- 療育施設勤務(音楽療法士/臨床心理士)
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