抗がん剤治療前後の心模様

「抗がん剤=脱毛」というイメージが強いと思う。

1年前、抗がん剤人生初体験の事前説明を受けているとき
「今までに脱毛しなかった人はいますか?」
と、主治医に聞いてみた。

なんとなんと先生の今までの経験の中で
たった一人脱毛しなかった強者がいたそう!!

そんな強者になれるかな?と期待していたが、
やっぱり脱毛した。

オーマイガー!」とならないように
ウィッグ情報やケア帽子情報を集めまくった。

とても助かったのは20年前からゆる~くつながっている手話コミュニティ。

健康診断をしっかりとしていち早く体の不調と向き合う
という予防医学の波に乗っていなかった私は
「卵巣がん」発覚時はすでに症状が出ていて、かなり進行していた。

抗がん剤治療の選択を迷う暇も
いろいろと準備している暇もなく、
治療の決定から入院までわずか2日。

そんなとき事情を説明しウィッグ情報が欲しい
と手話コミュニティのLINEグループに連絡すると、
励ましの言葉とともに具体的なウィッグのお店や
知人に問い合わせたウィッグ情報などがたくさん届いた。
カタログを取り寄せてくれたお友達まで。
感謝感謝でしかなかった。

脱毛・新世界

私が通う病院ではコロナ以前、
医療用ウィッグのお店が出張でやってきて
試着やカット、相談などを行っていたそう。
今はコロナ禍で中止…。
入院中の患者さん同士の会話も極力控えるよう言われているので
情報交換すらできないといった状況…。
う~涙…。コロナ禍で病気とともに
気持ちも落ち込んでいった患者さんはどれだけいるのだろうか?
考えただけで何とも言えない気持ちになってしまう。
幸い、私はたくさんのコミュニティと繋がれる
スマホのおかげでとても救われている。

 

そして、いろいろともらった情報の中から、
どこの美容室に行こうかな?
どんなウィッグにしようかな?
と悩んでちょっとしたウキウキ感を持っていたがそのウキウキもすぐになくなった…。

 

抗がん剤終了後の副作用で気軽に外出できず、
またコロナ禍で美容室は人数を絞った予約制に。
頭皮のケアなどもしてくれる美容室を備えたウィッグ専門店は数が少なく
予約もすぐにいっぱいになってしまう。
結局、どこかに出向いてウィッグを買うことは断念し、
ネット通販で購入することにした。

役に立ったのはインスタグラム。
お店のホームページでは、とてもきれいなモデルさん達がウィッグをかぶっていて
当然とてもきれいに見える。
でもインスタではリアルな様子を垣間見ることができた。

使い方やちょっとしたコツなど様々な情報を得ることができた。
また、医療用ウィッグという何十万円ものオーダーメイド品
という選択だけでなく、若者が気軽にコスプレやイメチェンで使うようなウィッグも
40代の私でも、というかアラフィフの私でも利用できそうなことが分かった。

更に、「がん」ではない他の病気で、
一生涯ウィッグとともに過ごす人たちが
情報交換しウィッグを楽しんでいる様子も知ることができ
新しい世界を見た気がした

すぐに1万円もしない格安のウィッグを通販で買った。
その後も、あれやこれやと主婦のお小遣い程度で買えそうなウィッグを買っては
ショートやロングなど楽しんでいる。
昼間に会った友達とショートで、夕方買い物でばったり同じ友達に会ったらロングで。
私のウィッグ事情を知っているその友達はクスクス笑いながら、
「いいじゃん!1日で髪伸びてる!!!似合ってる!」
と褒めてくれる。そう言ってくれる友達に救われる。

 

髪が抜けたときはショックで…。
というがん患者の声に触れる事がよくあるが、
正直私はあまり悲しくなかった。
醜い姿は嫌だったが、それをカバーするものはたくさんある。
女性ならなおさら選びたい放題!

今になってはありとあらゆる毛が抜けるので
高いお金を払って脱毛サロンに行かなくてよいのでラッキー!
しかも、髪を「洗う」「乾かす」「セットする」
この三点セットが不要に
女性にとってこんなに楽なことはないと思う。

自治体によっては病気によるウィッグの購入に補助金が出るところもある。
私の住んでいる市にはなかったのが残念だが…。

私はミーシャ!?

それにこんなことを言うと家族に怒られそうだが、
家の中でケア帽子をかぶっている姿を見るのは一緒に暮らしている家族。
自分自身の姿はふと鏡に映ったときぐらいしか見えないので、
あまり気にならなかった。最近ではインスタで
「ターバン帽子」というものに出会いすぐに購入。

 

 

 

ヘアターバン帽子  作家 titti22さんの作品

超絶おしゃれでいつも「私はミーシャ!」状態で
家の中で明るくいられる。

何より、ケア帽子よりも病人らしくなくて最高!

今では家族も私が「頭に何かかぶっている姿」
にだいぶ慣れてきたようだ。 

 

というわけで「脱毛=悲しい」
というイメージは私の中で
「脱毛=アレンジし放題」という印象に変わった
今一番の心配は病状が急変して、
もしものことがあったとき…。

棺桶のなかで私の頭はどうなっているのだろうか?

どうせだったら、ダリアの花かなにか華やかな花で
蜷川実花さんのカラフルな世界のようなかわいい頭にして欲しい…。

今からそんなことを言うと怒られそうだが、
そう願うばかりである。

2022.3.28