チャレンジド自身が制約の中でも、様々な仕事ができる戦力であることを証明できれば、企業の採用姿勢も変わるはず

障害者の場合に限らず、採用には、その時々の景気動向が影響しますが、
(1)で書いたように法改正がインパクトを与えることもあります。
障害者雇用促進補法は従業員数が一定規模以上の企業や公共団体に、一定率の障害者雇用を義務付けるものです。

未達の企業には納付金が課され、達成企業に助成金が支払われる、という制度設計になっています。

この法律で定める雇用率が引き上げられ、より多くの障害者が雇用される方向に改正されます。
障害者の雇用が伸びているというニュースは嬉しいことに違いありませんが、
実際の現場(採用活動の様子や仕事内容)がどんなものなのかも
見ておく必要があるでしょう。
そこで、少し古い情報になりますが、私がチャレンジドとなった後、

社会復帰の過程で、約5年間ほど実際に行った「就活」について今回は書きます。

当時は障害のある状況でいきなり独立ではなく、
地方自治体や民間企業の上記の法律の規定する障害者枠を活用して働くことを目指しました。

就活中、苦い経験もし、色々考えさせられました。

苦い経験というのは、障害者枠での採用試験であるにもかかわらず、
車椅子で面接に臨んだ私に対して
「うちはバリアフリーじゃないけど大丈夫ですか?」
と問われたことです。

勿論、全ての面接でこのようなことを言われたわけではありません。

ただ、こんなこともありました。
私は行政書士以外に、複数の法律系の資格のほか
簿記やPC関係の資格も取得していました。

「があなたの能力が生きる仕事はうちでは用意できない」とおっしゃる面接官がおられたのです。

障害者専門の人材紹介会社も存在するので、一時登録していたことがあり、
「資格があって仕事を用意できないというのはなぜですか?」とコーディネーターの方に質問したことがあります。

「企業側は島本さんのようにスキルがある方はすぐに転職するのではないか」という懸念を持つと思います、と回答されました。
健常者で、キャリア志向の人ならそうなるかも知れませんが、障害を負ってから初めて働こうとする状況で
転職を見据える人はあまりいないでしょう。

今思い返せばこれらの面接官の発言は暗に「あなたは採用できない」と断っていたのだと思います。
私の経験は一般化できませんが、障害者向けの仕事内容の幅はとても限定的と言えるかもしれません。

私が就活中にハローワークで見た、チャレンジド向けの求人票に記載された職務内容は次の2つに大別されます。

 

①事務職(補助):郵便物の整理、データ入力など
②軽作業:製造現場での製品の箱詰めなど

 

これらは必要な価値ある仕事です。

しかし、チャレンジド向けの求人にクリエイティブなものや
専門性のあるものはあまりないという印象でした。

つまり、選択肢がないのです。

そんな中上昇志向の強い私は、「専門性の高い仕事にも将来はチャレンジさせて欲しい」
と面接で言わざるを得ませんでした。そうなると、面接官としては「いやいや・・・」という感じで

ミスマッチにならざるを得なかったというのが10年弱経過したからできる分析です。
チャレンジドの雇用を増やすことが最優先としても、それと同時にやることがあります。

①就職したチャレンジドが職場に定着するように、職場側は、障害特性についての理解を深めること
②就職後にサポートできる主体が継続的にフォローすること

 

このような態勢を整えて、中長期的に、チャレンジドが職場に定着する事が必要不可欠です。

また、企業の採用姿勢をより前向きに変えていくために、チャレンジド自身は持てる能力を存分に発揮し、
制約を乗り越え、様々な仕事ができる戦力であることを証明していきたいところです。

 

最後に、日本の全人口に締める障害者の割合が6%台(閣府調査)であることに鑑み、

このことは日本社会にとって重要課題であることを問題提起します。

人口減少が叫ばれ、労働力人口をどう確保するかという議論があります。

しかし、そこで真っ先に「チャレンジドの活用」と発言する人は、現状ほとんどいません。

障害の有無に関わらずAIによりなくなる仕事があるという議論が最近活発ですが、

「外国人労働者の活用」も盛んです。

ここにチャレンジドが並列的に入ってくると、より良い世の中になると思います。