ヒューマニズム精神は大切だがそれだけで上手くいく話ではない
来春の改正障害者雇用促進法の施行を控えて、その手の情報がネット上でも増えています。
毎年9月が障害者雇用支援月間で今後更に情報は増えていくと思われます。
私からは少し古いですが、私の暮らす兵庫県で毎年開催されていている「障がい者雇用フェスタひょうご」
に2年前参加した際、仕入れた情報が普遍的な内容だったのでシェアします。
県内の障害者雇用における優良事業所を代表して、白鶴酒造株式会社(以下白鶴)の取り組みが紹介されました。
白鶴では、私が倒れた2000年あたりから障害者の新規採用に積極的になったようです。
私は障害者になってからの人生の一時期、2007年に民間企業への就職活動をしました。
後述する理由によりその頃は気づきませんでしたが、白鶴は、おそらく当時も積極的に障害者の求人を出していたと思われます。
ところで、私の障害等級は重度に当たる1種1級です。
重度の身体障害の場合、募集職種はSE系を除けば、事務職の場合専門性が要求されないものにほぼ限定されます。
よって、入社後、マーケティングや法務など専門性の高い業務へのキャリアアップが見込めない企業を私は就職先の対象から外していました。
また、その企業の事業内容や正社員かどうかの雇用形態も応募するかどうかの判断材料にしていました。
そのため、結果的に白鶴とはご縁がありませんでした。
私は就職活動に惨敗しました。
組織にあまり向かないと判断されたと敗因分析している今の私が、
就職活動に失敗したのは、結果オーライと捉えて独立しましたが、情報がないというのは本当にもったいないです。
障害者雇用の先進優良事業所かどうかという判断基準が当時の私にはありませんでした。
障害者雇用促進法では、従業員50名以上の事業所を対象にして、法定雇用率が2%以上(近衣装来2.3%まで引き上げられる事が検討されています)であることと定めていますが、
2014年度の兵庫県下の事業所の平均は1.9%と未達でした。
その中で、白鶴は2.5%と高く、更に、当時2017度目標を3%としていました。
さて、そんな白鶴ですが、1990年代前半までは、障害者雇用に消極的だったそうです。
転機はいわゆる「在職障害者」の雇用継続です。
つまり、在職中に新たに障害者になられた方の雇用を継続するかどうかの問題に直面されたのです。
企業の障害者との関わりでは、企業側には障害特性やそれに伴い必要となる障害者への配慮が分からないということがあります。
また、多くの社員にとっては、障害者と共に働くことが未知の体験であり、戸惑いがあるなどのハードルが存在します。
「あえて雇用しなくても」という意識になるのは想像できます。
「在職障害者」の雇用継続は総論賛成各論反対
しかし、それまで共に働いていた人が新たに障害者になる「在職障害者」の場合、既に仲間意識が存在しています。
私が倒れて重い障害を負った時も、職場の誰もが、「今は休んでいいから早く帰ってこいよ」
と励ましてくれました。
より大きな視点で見ると、障害者になった人が即クビになってしまうと、他の社員は「自分が障害者になればクビだ」
と考え、職場の士気は大幅に下がるでしょう。
よって、「在職障害者」の雇用継続には、一定の理解が生まれやすいと言えます。
とはいえ、ある程度の規模の企業で障害者が自分のいる部署に転属されてくる場合、白鶴でも戸惑いや反対があったそうです。
しかし、「在職障害者」の雇用を守りぬくことで、社会から大きな評価を受ける企業に体質変換できた成功事例が白鶴です。
白鶴の場合、ドラマにもなった『1リットルの涙』でご存知の方もいらっしゃると思いますが、
進行性の難病「脊髄小脳変性症」になった社員の雇用維持に取り組んだことが大きな財産になったそうです。
進行性で症状が固定しないため、ステージに応じた配慮をされたことが大きいと思われます。
この経験により、外部専門家の支援や制度を活用した職場環境の整備などノウハウが蓄積されたようです。
更に、新規採用もできるという自信が生まれ、一気に障害者雇用が進んだそうです。
素晴らしい事例ですが、ヒューマニズムだけで取り組むのは難しい問題でしょう。
障害者雇用に地道に取り組むことが社内を活性化させ、さらに企業価値を高めることに繋がる事実を証明しているのですから、
顕彰する機会を設けて広く社会に成功事例を知ってもらう必要があります。
なお、同フェスタでは、まさに来春の改正法施行で対応が問われる「メンタルヘルス不調者(うつ病などの疾患を抱えた人)」
をどうフォローすべきかが大きな課題になってきていると言う問題提起が既になされていました。