当事者の発信→「ソフト→ハード」→当事者の行動力によるフィードバック
「誰もが暮らしやすい、バリアフリーの世の中を実現します!」という目的を掲げ、
私は2014年3月に「バリアフリーチャレンジ!」と言う活動を始動しました。
そして、この目的を達成するために、私が現状考える
最短ルートが冒頭の強調部分のフローチャートです。
1.ある事故の体験について
まずは、過去に私の身に起こった事故体験を紹介して本論に入ります。
大阪で仕事の打ち合わせをした時のこと。
待ち合わせ場所の商業施設内で私の杖が折れました。
昇りのエスカレーターに乗っていて、事故が発生しました。
私は過去に猛特訓を重ねてエスカレーターを使えます。
勿論、人によりますが、片まひでも(私は左半身まひ)訓練次第でエスカレーターは使えます。
同行されていた仕事関係者の女性(以下、同行者)の方も
「こんなこともあるんですね!」と驚かれていましたが、私も初体験です。
何が起こったか。
エスカレーターを使う時、私なりの決まった手順があります。
➀エスカレーター前で、杖に付いているひも状の輪っかを右手首に通す
②タイミングを計り、右手を伸ばしてエスカレーターの手すりをつかみ、
③同時に健康な右脚を振り出して乗り移る。
最大の勝負どころはここです。
右脚を振り出して乗り移れば、まひした左脚は慣性で自然とついてきます。
乗った後は、杖は手首からぶら下がって、右脚周辺にありますが、
その右脚が手すり側に寄り過ぎていたのが事故原因です。
間が悪く、手首にぶら下がった杖がちょうどせり上がってくる足を置いているステップと
手すりの間にすっぽりと収まってしまい、すごい力が加わり
「パキン」という乾いた音を立て杖は真っ二つに折れ曲がってしまいました。
突然のアクシデント、問題は降り口での対応です。
杖のない状態で無事に降りられるのか!?
この事態に私は意外に冷静でした。
杖のない状態でしたがいつもの通り右脚から降りたところ、
不安定ながら転倒しませんでした。
同行者も異変に気づき、すぐに手の届く位置にいてくれたことで
安心できていたというのもあります。
この事故によって、私は冒頭のバリアフリー実現のフローに
思い至りました。
各要素のうち「ソフト→ハード」の部分はバリアフリーの中身です。
直近の記事でこの順番の認識に基づき、優先順位が高い
ソフト面に特化した話をしました。
ハード面のバリアフリーはソフトと同時にやるのがベストですが、
効率面から優先順位が高いのはソフトです。
今回打ち合わせに使った大阪のある商業施設は、
(駐車場からの経路しか確認できていませんが、)
エレベーターまでの距離が長く使いにくかったです。
結果、エレベーターでなく、エスカレーターを使う選択をしてしまいました。
ハード面の不備を指摘すると、設計段階での配慮不足です。
無論、安全策を採らなかった私の行動にも問題があります。
さて、杖が折れた後、私はその日1日を杖なしで過ごしました。
自宅内は杖なしでもほぼ大丈夫ですが、外で杖なしでは歩行困難です。
ここで日頃の心構えが生きてきます。
2.暮らしやすさの実現に必要な社会と当事者の相互作用
チャートの「当事者の行動力によるフィードバック」の部分の実践です。
つまり、「人に助けを求める」のです。
このことは、バリアフリーが進んだ後でその実効性を担保する上で
かなり大切になると思います。
ソフトは言い換えると人との人の関係です。
杖をなくした私は同行者にお願いして、肩を持たせてもらい、
杖の代わりになってくれるように頼みました。
困った時にお願いできる関係を普段から周りの人と築くことが
チャレンジドには特に求められます。
付言すると、チャートに私は「行動力」と書いています。
仮に同行者がいなくても何とかします。
私は迷わず声を上げて知らない人に助けを求めます。
(そんなことはないと信じていますが、)
サポートを誰からも受けられなければ、最後は警察に保護を求めます。
障害当事者が「バリアフリー、バリアフリー」と声高に叫んでいると
「社会に何とかしてもらいたい」という依存があるように見える
部分もあるかと思います。
しかし、私は、能力に応じて当事者が自助努力
することが前提であると考えています。
障害のある状態で積極的な社会参加を望むなら、
「個々の能力に応じた行動=発信」が必要です。
3.当事者による発信で世の中は変わっていくはず
活動開始から4年目に入り、これまでの情報発信の集大成として、この記事を書いています。
ソフト面におけるバリアフリーの話の中で以下のように書きました。
「障害というバリアを乗り越えてコミュニケーションをとり、
バリアフリーを実現するには、障害特性についての理解が不可欠」
で、この部分の理解を促進するために、生活の中で自然な形で交流ができれば
いいのですが、チャレンジドが少数派である以上なかなか難しい。
そこで、必要になるのが、当事者であるチャレンジドの側からの積極的な情報発信。
私はこの認識に基づいて情報発信を活動の柱に据え、3年間メールマガジン、
そして積極的に機会を求めて講演を行い情報発信してきました。
過去に3回行った講演の講演等についてはこちら(←クリックすれば当該ページが開きます)にまとめているので是非ご覧ください。
これが活動の現状です。お役に立てそうな場があれば、喜んで伺います。
リクエストに応じて話できますので、お声掛け下さい。
生の声にこだわったインタビューも含め、全ての人の生活に役立つバリアフリー化について今後も継続的に発信していきます。
当事者からの情報発信を重視する理由について、私の杖が折れた事故を題材にもう少し書きます。
事故をじっくり振り返ると、自分の動きに問題があったと気付きましたが、
その時は「え?」という感じでした。
理学療法士の先生おに話を伺ったところ、「杖が折れるというのは聞いたことが無い」とおっしゃっていました。
私自身の想像力不足ですが、リハビリをする中で、
「エスカレーターを使うなら、こういう可能性もあるので
気を付けた方がいいよ」と、専門家から注意喚起されたこともありません。
おそらく情報自体をお持ちでなかったと思います。
また、他にもてんかんの発作について、
「後遺症で出ることもあるので生活の中で睡眠不足に気を付けること」
というドバイスを、医師から事前に受けたことも全くありませんでした。
睡眠不足が良くないことを知ったのは発作が起きた後です。
そんな経験をしてるからこそ、看護学校での講演で、
「こういう情報は患者に伝えて下さい」と、いう情報発信をすることができました。
このように当事者が経験を積極的に発信することは極めて大切です。
情報発信によって、
①発信→「ソフト・ハード」という部分は勿論、
②発信→当事者の行動力という別のフローも作れるので、
発信により、フローチャートの全要素に影響を与えられます。
過去にチャレンジドの心構えやなども書いていますが、
②についての発信も積極的にしていきます。
次の展開として私が見据えているのがは、
「志が完全に同じでなくてもベクトルが一致していて、お互いに協力して情報発信ができる
パートナーとできるだけ多く繋がる」ことで暮らしやすい世の中の実現に向けた動きを加速させること。
高齢化のスピードからして、ネットワークを組んで対応しないと間に合いません。
人任せで目をつぶるのは簡単ですが、当事者だからそれはできません。