これは私達一人一人がもっと関心を持つべき、問題です

エレベーターのアクセスから考えた街づくり(1)で、

このことについて考えるきっかけになった
ある駅で覚えた違和感を書きました。

違和感の正体は、エレベーターの設置場所を
深く考えていないことにありました。

あれこれ思い巡らせている中で他の駅はどうなっているのだろう、
という問いが生じたので、その問いをこの記事で検証します。

1.駅のバリアフリー状況概要

建物構造が複雑でスペースが限られる駅舎ではバリアフリー化の遅れが目立つ。
国土交通省のまとめによると、
2015年度末時点で1日あたり3千人以上の平均利用者がいる
JR旅客6社の主要駅(1205駅)のうち、
11%にあたる136駅で段差を解消するためのスロープやエレベーターが未設置だった。

バリアフリー工事は駅の一部を改修する必要があり、
費用が数十億円程度に膨れる。
計画から完成まで数年かかり、(後略)

情報源: バリアフリー化、主要駅の1割が未対応  :日本経済新聞

私が書くよりまとまった記事がある場合は、引用します。

2.ある駅の事例紹介

私が問題意識を持った駅は、初めて行ったという事を差し引いて考えれば、
構造はまだシンプルでした。

ですので、二度目以降に感じるストレスはかなり軽減されるはずです。

しかし、複数の路線が乗り入れているターミナル駅だとそうはいかないようです。

ニュースで見て、記憶に残っていたのですが、
障害者が訴訟を起こしている事例もあります。

JR西日本は10日、エレベーター3基を増設するなど京橋駅(大阪市)
のリニューアル工事に着手すると発表した。
完成予定は2021年。京橋駅のホーム間を車椅子で移動する場合、
エレベーターを最大で5回も乗り継ぐ必要があり、
車椅子の利用者が昨年、JR西に増設を求める訴訟を
大阪地裁に起こしていた。3基が完成すれば、1回の利用で
ホーム間を移動できるようになる。【根本毅、原田啓之】

京橋駅は、大阪環状線のホームの下を
東西線・片町線のホームが交差する。
エレベーターは現在5基あるが、
環状線外回りから片町線上り線に乗り継ぐには
5基全てを利用し、別のホームを端から端まで通る必要があるなど、
車椅子やベビーカーの利用者を中心に非常に不便な構造になっている。

このため、車椅子を使う宮崎茂さん(51)=大阪府大東市=が昨年9月、
「憲法が保障する移動の自由の侵害」としてJR西を相手取り提訴し(後略)
情報源: 大阪・JR京橋駅:車椅子乗り継ぎ楽に 21年までに3基増設 エレベーターで最大5回 – 毎日新聞

引用元の記事の図を見ると、これはもう迷路です。

解消に向かうなら、車椅子生活者のみならず、
「全ての人」にとっての福音です。
「全ての人」とする理由は後述します。

訴訟を起こす、という多大な労力を要し、
なかなかできないことをされた宮崎茂さんに敬意を表します。

このような当事者の声で、少しずつ暮らしやすい社会が
実現していくのは事実で
このことにフォーカスした記事を今月中にUPしようと思っています。

3.利用する駅の構造に全ての人が関心を持つことが大切

①エレベーターのアクセスの利便性は全ての人に関係のある問題

「全ての人」と前述したのは、私自身が22歳で障害者になる
というまさかの経験をしたことが大きいです。

糖尿病予備群などの言葉をよく聞きますが、
人である以上、全員が「障害者予備軍」ですし、
高齢になれば身体機能は間違いなく低下します。

高齢者は誤解を恐れず分かりやすく言えば、
「準身体障害者」と位置づけられると思います。

つまり、エレベーターのアクセスの悪さは全ての人にとって、

百害あって一利無しです。

だからこそ、全ての人に、この問題を我が事に引き寄せて
考えて頂きたいと思います。

最寄り駅や通勤経路にあたる駅の状況はどうでしょうか?

②「惜しいバリアフリー」は至る所にある!?

このような呼びかけをする以上、「隗より始めよ」で、
私もよく利用する駅の状況を調べてきました。
そのレポートで締めくくります。

私の地元は歌劇で有名な宝塚。

市内で複数路線の乗り換えがあり、
その利便性がもっとも高いのが、
JRと阪急が隣接している宝塚駅です。

ここはこの街の玄関口です。

私の利用実感として、車椅子で乗り換えをするには、
惜しい!と言うのが率直な感想です。

エレベーターはあって、一見バリアフリーです。
少しのストレスはあるものの、
前述の京橋駅ほどではありません。

単純にJR⇔阪急の駅間の移動なら、
1回エレベーターを利用するだけで良く、
100点です。

 

阪急宝塚駅の北に隣接するJR宝塚駅にむかうための 阪急改札前にあるEV乗降口

阪急宝塚駅の北に隣接するJR宝塚駅にむかうためのEVで 1階昇り、 写真左手の連絡橋から写真奥に位置するJRへ移動可能

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、街が潤うためには、人が中心街に流れる必要があります。
JRの北側に当たる山手には、多くの市民が暮らす集合住宅があります。

ですから、2つの駅がキチンとエレベーターで結ばれていることは必要です。

しかし、街への人の流れを考えると、
これだけでは不十分です。

宝塚歌劇の大劇場があり、
人が集まるエリアは
これとは逆の阪急の南側にあります。

そこにJRの駅から行くには、
上記エレベーター一つでは、
道をぐるりと回れば車椅子でも行けますが、かなりの遠回り。

最短ルートは、エレベーターを乗り換える必要がある構造になっています。

 

阪急宝塚駅南側EVは、
改札を出て少し行った
ところにあるこの店をこえた 左手奥に

阪急南側EV
を改札階コンコース
から撮った写真

改札階コンコースが南側の地面から見ると、2F部分にあたります。
地上コンコースに出たところが、次の写真です。

この奥に人は流れていくのです。

 

なぜ一つのエレベーターでスムーズに移動できないのか?
という素朴な疑問が生じます。

③長期展望の欠落が原因

エレベーターを整備して頂けたことで、少なくとも車椅子生活者も
鉄道を利用できているのでマイナスではないことは強調しておきます。

しかし、長期を見据えていないから、
逸失利益が生じていると思います。

様々な制約があるのは理解します。

地元を調べる良さは、
ある程度歴史的な経緯を把握できている点にあります。

私の記憶では、鉄道高架化の機運の中で、
先に阪急宝塚駅が改築されました。

阪急宝塚駅は宝塚と西宮北口を結ぶ今津線
及び宝塚と大阪梅田駅を結ぶ宝塚線の発着駅です。

JR宝塚駅は一方は大阪、他方は三田や篠山など丹波方面に向かう福知山線の駅で、
大阪行きは阪急宝塚線と並走するような形です。
JR宝塚駅は地上を線路(この線路を基準面とすると、
阪急宝塚駅南側地上はB1Fになる)が走っていて、
遅れて高架の駅舎が造られました。
他方で、阪急は地上から見ると3F部分に線路があります。

電車の走る線路の高さが違うこと、
駅舎を作った時期が違うことにより生じた
構造上の制約は非常に大きいです。

前述の一つのエレベーターで、ということを
今からやるには莫大な費用が生じることは想像に難くありません。

では、この問題の発生を防げなかったか、
と言うとそうは思いません。

違う会社であるとは言え、
街の振興は、乗降客数の増加を通して
自社の利益に繋がるという
共通の利益があります。

また、鉄道という重要な社会インフラを担う企業体として、
小異は捨て、大きな目的を共有し、
駅の改築段階で両社で設計を考えるような場
があれば良かったと思います。

勿論、これは両企業のみを責めて済む問題ではありません。

もっとも関係する我々市民が関心を持ち、
計画を注視し、特に感覚的によく分かっている
当事者が関与する、関与できるように政治、行政が仕組みを整えていおく。
それがキチンと機能していたならば、こうはなっていなかったはずです。

これから東京オリ・パラに向けて東京ではのような整備が加速しますし、
その機運は少なからず地方に及ぶはずです。

そうでなくても、それぞれの街で様々な開発が日々進められています。

後の祭りにならないように、私達一人一人がもっと関心を持つべき、
問題だと考えますが、どう思われますか?

 

 

 

投稿者プロフィール

島本 昌浩
島本 昌浩
バリアフリーチャレンジ!代表
challenged-view編集長