ゲストの方を迎えての対談をメインに据え、
島本の経験談をシェアする回を時々挟む構成のネット配信企画
「ボーダーレス」を月一で継続中
後者の場合ひとり語りもいいのですが、
他者が関心を持ったポイントをを反映できた方が
広がりが出るので、経験談談放送回では、
助っ人として、互いの活動を応援し合う関係のNPO法人Gift代表
の小山真由美さんにご協力いただいています。
その模様をテキストにまとめたのが本稿です。
私が2020年にした引っ越しに伴うあれこれが主題。
ここが大変!障害者の引っ越し
私のような車いすユーザーの引越っしと
健康な方との違いを知って頂くことで
意識のボーダーを小さくしたいという趣旨です。
小山さんは2年前に東京から大阪に引っ越されて大変と感じたそうで、
その感想を持ったうえで話を聞いてくれました。
痛恨のミス→冬もシャワーのみの生活⁉
今回、私はまさに痛恨のミスを犯しました。
私は屋外のみとはいえ車いすが必須の身体能力なので
転居先の物理的なバリアフリー環境を考えるのは当然。
言い訳になりますが、一人暮らしではなく、
元カノとの共同生活のスタートということで、
新たな生活に向けて私は冷静さを失っていました。
彼女の配慮で、周りはほぼ平地の地域
玄関先に車いすが置ける等大部分が
クリアされている物件が候補になっていました。
一緒に内覧に行った際、注意深い人であれば、
自分の障害の状態でちゃんと生活が営めるのか
細部まで点検しますが、
私はお粗末にもメジャーさえ持っていかず、
お風呂の浴槽の高さや深さを実測せずに契約
転居後に湯船に入るのが厳しいと判明…。
事前のリサーチを丁寧に行うことは必須です
他者との共同生活に潜むバリア
前述のリサーチ不足で露呈したハード面のバリアだけでなく
ソフト面のバリアもあってのシャワー浴生活でした。
彼女が冬もシャワーで済ますスタイルで
私が先に入るという生活時間
仮にお湯をはり、私が先に浸かるなら
お湯は全部入れ替えるというありがちな話で
「それはもったいないから別にシャワーでええわ」
と生活スタイルの違い(文化的な違い)は、
私が折れて済むことならと折れ、
冬のシャワー浴にも適応しました。
シャワーだけでも熱めのお湯を首筋に当てていると、
それなりに温まるので何とかなります。
お湯が出れば致命傷にはならないです。
小山さんもお母さまが車いす生活になった際、水回りに
手すりを付ける対応をされたそうですが、
それまでそういう状態になる想定をされておらず、
御手洗のドアが車いすのままだと入れないから
ドアを取っ払って付け替えることになったとか。
制度の縛り サービス移転の難しさ
さて、荷物はPCや衣類など最小限で身軽な転居
しかし、初体験の強いストレスが!
これは健康な場合にはない障害者特有のもの。
障害があるがゆえに利用しているサービスを
転居先に移す必要があり、これが大変。
私の場合、入浴介助にヘルパーさんに入って頂く
「身体介護」というサービスと訪問リハビリを利用
これらに公費を支出していただくには
公的な制度とつながる必要がある。
それまでは障害福祉サービスというカテゴリーで
利用していたため、制度上利用料の自己負担はリハビリの部分のみ
転居時42歳、サービスを利用する場合、
介護保険の認定調査を受ける必要がある
という見解が行政から示された。
30代の時にも同調査を受けたが、「自立」判定
自立の場合介護保険のカテゴリーで福祉サービスを
公費で受けるための根拠がない。
そこで、障害福祉サービスの障害支援区分
という介護保険でいうところの要介護度のような認定を受けて
それを根拠に当時週2回の入浴介助
週1回80分の訪問リハビリも受けていた経緯がある。
転居する段階で転居先の役所に聞くと、
介護保険の認定調査が必要とのこと
なぜ再度介護保険の認定を受ける必要が?
と疑問に思ったが定期的に受ける必要がある性質ではあるが
転居時にこちらから問い合わせたことで
このタイミングで受けてと藪蛇のような感じになった。
二転三転した行政の見解
介護保険適用になると、最低1割の自己負担が
発生するので確実に負担増。
この自己負担について、
転居前の自治体の障害福祉課の方に照会
転居先自治体に問い合わせてもらった。
行政同士で話をしてもらった方がいいと考え、
私がバリアフリーチャレンジで共に動いていた知人に
「こういう状態だけど頼れる人いますか?」
と紹介して頂いた。
障害福祉サービスを使っていたので
制度上のキーパーソンである相談支援専門員
という専門職の方に情報共有しながら進めた。
私が個人的に動き、照会した役所の方に転居先の区役所に
確認してもらったら、これまで通り障害福祉サービスが使える
という回答が1回は返ってきた。
ところが、専門員の担当者が
少し後で再度転居先の役所に確認したところ、
私が最初に転居先に聞いた時と同じ回答に逆戻り。
障害福祉課の方からの照会で障害福祉サービスが受けられる
と回答した担当者が誰か分からないし、
「そんな回答をするはずがはずがない!」
と混迷を極めた。
法的根拠
この状況で私が護保険のカテゴリーに入る根拠は、
身体障害者総合支援法の第7条で規定されている
介護保険優先適用の原則にある。
これは、同じサービスで介護保険サービスに該当するものがあれば、
障害福祉サービスではなくて介護保険からサービスを受ける
という原則である。
障害福祉サービスをずっと継続して若い頃から受けている場合だと、
65歳になると介護保険の第1号被保険者になって
同様のサービスが介護保険で受けられれば
自動的に介護保険のサービスを受けるという運用が
この界隈ではずっと問題だと言われていた。
また、40歳以上65歳未満は2号被保険者で、
この場合、「パーキンソン病」や「末期がん」、
私のなった脳出血や脳梗塞をまとめて
「脳血管疾患」等の特定疾病が16種類定められていて
これらの指定疾患により障害者になった場合、
介護保険のサービスが優先される。
残る疑問
「介護保険適用になりました」
と知人の弁護士の方に伝えると、
その方に「おかしい」と言われました。
曰く、「島本さんが発症したの22歳でしょ?」と。
「40歳になる前からに特定疾病で障害者の場合は
障害福祉サービス継続のはずだ」という立論です。
これに基づいて、「審査請求出したら?」
というアドバイスもいただきました。
しかし、時間がないなかで行政を相手に争うより
介護保険利用で妥協することを選択(正解だったかは分かりません)
行政に不服を申し立ててそれが認められず、
なお争うなら行政訴訟を起こして司法の場でどうぞ
という制度設計で私の体力でとても働きながらできない
という現実的判断でした。
妥協の代償は負担増。
それまでと比較して週2回の入浴
(※障害福祉サービス時は自己負担なし)
と、週1のリハビリにかかる費用合わせて
介護保険に移行して負担は月額で約10倍に。
月で見るとそこまで大きい額ではないんですが、
年換算すると痛い数字でした。
私が妥協したのは、私の側の担当の方は、
相手側の役所の担当者名もおさえていなかったので
争うにも無理筋に見えました。
とはいえ、担当者は選べないし、
逆に担当者も利用者を選べないので、
そこを責めても仕方ない。
不可解さが残りつつも、
介護保険サービスを受けるという前提で、
転居後の生活を送るための調整を進めました。
人が変わるストレス
さらに、福祉サービスは地域と結びついているため、
転居すると、支援チームの再編がなされます。
まず、介護保険に変わったので、
キーパーソンが相談支援専門員から
ケアマネージャーに。
また、それまで入浴介助を担当してくれていた、
そこで縁を頂き
バリアフリーチャレンジでもともに活動している
慣れた方から何とか見つかった立ち上げ間もない事業所
の20代の若者に変わってぎこちない感じに。
時間をかけて協力関係を築き、
「あ、うん」の呼吸ができるまで半年以上を要しました。
その青年は自分のおばあ様の介護を学生時代にしてきて、
介護の道に進みたいと志を持ったそうで繊細で気が利く方です。
個人的な印象ですが、福祉の仕事をされる方には
そういう原体験のある方が多い気がします。
人の出入りが激しい業界ですが、この青年には、
私が実家に再度戻る直前まで関与していただきました。
他方で当時、週2回のうちもう1日は青年とは別の方に
来ていただいていたので、個性豊かな様々な方と出会いました。
全然別の業界から来て「前は飲食やってました!」とか。
別の方からは「もとは古着屋やってました」とか興味深い話を伺えました。
小山:そういうのって、全然知らないというか
いつも島本さんの発信がずっと面白いなー
って思ってたのって、障害者の人が日常どういう視点を持っているか、
通勤の様子とかフェイスブックで投稿されてた時期があったと思うんですけど、
通勤とか通学の様子とか、やっぱりそういう目線がないと、
なるほどそういうところって確かに困るよな~って
改めて感じてたというか、
すごく負担が大きいというか、
そういうのをすごく感じましたね。
なんか大変やな~って。
入浴のチームに関しては、見つかるまで難航したがその後は良好
リハビリについては、これまでと同条件の「80分間で
と探し、結果引き受けてくれるところと巡り合い、
現在もお世話になっています。
最初は、介護保険で80分もリハする人は
ほぼいないらしく、「80分ですか?!」という反応。
私ももう若くないし、脳の病を発症した後の目に見えて身体機能が回復していく
回復期という時期は過ぎ、慢性期という機能が固定して
劇的な改善は見込めないのが現状
よって、今の機能をいかに維持して
ちょっとでも良くなるように工夫をしていくか。
80分のうち季節がいいと半分は歩くという感じでやってはいますが、
寒い時期になるとなかなか十分な運動量を確保しにくいです。
住めば都
ここからは逆に転居しても変わってない楽しい点を。
車いすユーザーはやはり少数派で
ありがたく思いますが、声をかけられる確率が高い。
マンション暮らしだと今はエレベーターで会っても
コロナもあって、住人とは会釈で済ませるくらいかと思う。
しかし、私はやたらと声をかけられて「よく会うね~」
みたないことがあり、いやそんな会ってないと思うけど…
というのがお約束。
すぐ覚えられるのは、どこに行ってもかわらない
混雑する駅でも、通勤で毎日会うから駅員さんもすぐ覚えてくれる。
何かと人懐っこくしていただけるのは私にとってはありがたく、
嬉しいことです。
小山:声かけてもらえると嬉しいですよね。
今回まったく知らない人ばかりの地域ということで隣近所分かりません
っていう状況について番組名にちなんで、
そこをボーダーレスにしていこうという取り組みとして、
私は結構コミュニケーションを積極的にとります。
自分から地域に入っていこうと思って、
彼女の仕事の繋がりを借りてご近所のコミュニティ
にある時期毎回行きました。
行けばすぐに覚えて頂けます。
その中で、子供に声をかけづらいというお話が出てきました。
実際に子供が狙われる犯罪もあり、
狙われた場合に自分の身を自分で守れないから
やむなくそうなるっていう面は否めないけど、
障害者も狙われたらどうにもできないという点では子供に近い部分がある。
それでもやたらと声をかけられるのを私は歓迎します。
別の話題で特に高齢の方は親切心がある方が多くて、
私のような車いすユーザーであったり、
白杖をついている目の不自由な方がいたら、
何か手伝いをしたいけど、具体的にどういう風にやるのがいいか
というのがあり、視覚障害だと
具体的なアクションが分かりにくいと。
他方で、車いすって分かりやすいみたいです。
小山:一番分かりやすいかもしれないですよね。
バリアフリーチャレンジでバリアフリーな世界を作りたいって島本さんおっしゃってて、いろんな障壁がなくなっていくとみんなが暮らしやすくなる!
って島本さんが言っていたのを私忘れられないです。