Ⅰ.福祉用具購入費助成時の審査

■助成の条件は身体機能からしてその福祉用具が生活に不可欠かという「必要性」

私の人生における重要課題でありながら、どう対応するか紆余曲折を経て
ようやく結論に到達した私の「移動の自立」の前提の話を書きます。

私の人生における重要課題でありながら、どう対応するか紆余曲折を経て
ようやく結論に到達した私の「移動の自立」の前提の話を書きます。

(0)では、私の行動プロセスから、お役に立てるであろう制度についての情報を主にシェアします。
私が「移動の自立」に向けてどのように行動しようと決めたのか、反省点も踏まえてお届けします。

さて、一つの事例として参考になれば、との思いでブログで私の社会参加に向けた実際の歩みを紹介しています。

その最初のステップが「移動の自立」であり、その手段として電動車椅子を現在導入しています。

肢体不自由のチャレンジドが車椅子などの福祉用具を購入する場合、条件を満たせば、国・都道府県・市町村の財源から

助成を受け、必要資金のほとんどを賄うことができます。
この条件とは、身体機能からしてその用具が生活に不可欠かという「必要性」です。

経験豊富な業者の方から、私の住む兵庫県の判定では、島本さんの場合、電動車椅子の必要性は身体機能的に微妙です。
とにかく「仕事で使う」という線で押すしかありませんとアドバイスされました。
ちなみに、同じ兵庫県でも神戸市に居住する人が審査を受ける場合は助成が認められやすいそうです

(居住地が政令指定都市の場合はその市、それ以外の場合は県が判定権限を持っています)。
業者の方の言葉が事実なら、財政事情に左右されると推測できます。

果たして私は審査で「必要性」については認められました。

しかし、電動車椅子を導入する私の方針は判定医の言葉によって見直しを迫られました。

「操縦の安全性に懸念があるケースに対して公費助成のGOサインは出せない」

……

後遺症で視野と空間認識に問題があることを
正直に自己申告したためです。

医師に「あなが電動車椅子を操縦するのは危険」
と言われてこの手段に固執するのは問題です。

Ⅱ.移動支援のメニューについて

■ソフト面のサポートサービスにおける移動には種々の難しさが伴う

「操縦の安全性に懸念があるケースに対して公費助成のGOサインは出せない」

と言われ、ソフト面で別の公的制度がないかについてのリサーチを私はしました。

1.障害者総合支援法に基づく公的な移動支援

管轄の市の障害福祉課に問い合わせると、

条件があるとのことで、私の身体機能について

質問されました。すると、

 

「利用条件を満たさないと思われます」と即答。

この制度設計に基づくと、肢体不自由者は
ヘルプを必要としないくらいの身体機能があるか

(そうなると既に肢体不自由者なのか謎ですが・・・)、
逆に、移動支援を受けないとどうにもならないほど障害が重度でないと
家族などの手を借りずに移動することは難しいということです。

つまり、私のようにリハビリの成果である程度身体機能をを向上できた者は

移動についての公的なセーフティネットから

零れ落ちると感じました。

 

役所の方はこれまで多くの事例を見てきた経験から

前述のように回答されたはずです。

しかし、私としては身内の協力が得られない場合を想定し、

働いていくための移動の自立という死活問題です。

よって、「根拠を教えて頂けないでしょうか?」
と尋ねました。

すると、障害者総合支援法に基づき市町村に権限のある事業である
ということが分かりました。

ちなみに、この制度を使えればチャレンジドは

経済的にかなり助かります。

私はある程度法律を読み込んでいるので、

位置付けはすぐに理解しましたが、
私を即座に対象外と判断した基準がよく分かりませんでした。

 

その場では運用のガイドラインのようなものの存在は
示されませんでしたが、入手できれば全て読みます。

そこまでするのは、私にとっては死活問題であり、
私の経験をこうしてシェアすることが他の方の役に立つ

と信じているからです。

 

市からの正式な回答を待つ間、自治体以外で

私のような立場の者にアドバイスして頂ける機関があれば
紹介して頂けますか?

とお願いし、同時並行で解決策を模索しました。

 

以下の2つの機関を紹介されました。

(1)社会福祉協議会内の障害者自立生活支援センター

(2)社会福祉法人運営のサポートセンター
*これについてはいくつか教えてくれましたが、
それぞれ知的障害に強いなど特徴があるようでした。

まず、公的部門に近い社協に問い合わせ。
いくつか代案を教えて頂けました。

2.ボランティア
有志の方にヘルプして頂ける形態で、
具体的には、車椅子移動の介助をしてくださり、
公共交通機関も利用する形があるそうです(利用してないので伝聞)。
この方法について、1件ボランティア団体をご紹介頂きましたが、
対価を伴わない話に気乗りしなかったので直接お話しませんでした。

3.介護タクシー
車椅子が常時必要というレベルの身体機能なら、
リフト付きの車両があるので有力です。
しかし、
私は常時車椅子ではないので普通のタクシーに車椅子を
畳めれば十分です。
よって、私の場合、この選択肢は現在家族が運転
してくれている車をタクシーに変えるという話です。

タクシーチケットの助成はあるものの、

タクシーのみの移動はやはり経済的負担が大きいです。

従って、選択肢から除外しました。

4.有償ヘルパー
これは分かりやすい形ですが、
1時間2,000円が相場で安くはないです。

このように色んなメニューはあります。

しかし、公的な制度が使えない場合、ある程度の経済力がないと思い通り移動するのは難しい

というのがリサーチした印象です。

公的な移動支援は経済目的では使えない

市とのやりとりで、一つ公的制度において、「え!」という話があり、

私の利用目的では無理だと分かりました。

それは仕事での外出のサポートはできない

ということです。

 

基本的に家の周辺の買い物や余暇活動等以外の利用は不可とか。

その後リサーチした結果、継続利用でなければ、勤務先までの

バリアフリールートの確認に利用できる可能性があるとの情報を

得ましたが、結論としてはこれも表面的には余暇利用の形を

採り、その中でついでに確認するという裏技的な使い方

をする必要があるということでした。

この制度はチャレンジドの就労を後押しできていないため、

福祉サービスとは言えないと考えます。

 

ちなみに、社会福祉協議会に以下の質問をしました。
「少数派とは言え、相当数の移動に困難を抱える障害者がいる中で、
これまでに働けるように移動をサポートした実績はないのですか?」

回答は「希望された方はいたが、条件が合わず、結局家族の方がサポートされた」でした。

熟考の末、これしかないという結論を出しました。
移動支援の中身を知って頂ければ幸いです。

Ⅲ.報の重要性

■制度は申請を前提に設計されているので情報がないと損をする

電最終的な結論を出すために大切だった情報の重要性について。

公的な移動支援の説明を受けた際、
電動車椅子の公費助成の認定の方は

どんな状況かを質問されました。

 

「安全性に懸念があると言われていて、

おそらく公費助成は認められないと思います」
と私は正確に伝えました。

すると役所の方は、

「公費助成が難しいのなら、市の育成会から電動車椅子を

レンタル利用する方法があります。費用は月々3,000円くらいです。」
と操縦における安全性を無視した発言をされました。

障害福祉に限らず、市町村は、我々の一番近くの行政主体です。

障害が絡むと、今回の判定のように、

身体障害者更生相談所などの専門機関が
補助的な役割を果たします。
(後述するように結果論としては自立手段の意思決定ができ良かったですが)

今回はここでの情報共有はなされていなかったようです。

 

安全性を横に置いてレンタルでの使用を勧めるということは、

自費で電動車椅子を購入して使用することはOKであり、

ソフト面のサポートの選択肢であるタクシーや有償ヘルパーの利用
はかなり高くつくので、私の「移動の自立」には、

電動車椅子が不可欠という当初の考えに戻りました。

 

そこで、長期的に考え、初期費用が膨らんでも自費購入を選択しました。

■電動車椅子も道路交通法上歩行者扱い

しかし「安全性」は?

後遺症の「視野の狭さ」や「空間認識の問題」は、

電動車椅子使用と無関係にあります。

 

助成のための判定を受ける前からその状態で、

交通量の多い道や側溝がある道を毎日歩いていました。

判定を担当したドクターは私のこの様な日常生活は聞かずに、

電動車椅子のみに焦点を当てて、

「側溝に落ちるかもしれない」

とおっしゃっていました。

 

私の安全を考えておられるなら、

「なるべく一人で外出せずに生きていく方法を考えましょう」

とアドバイスすべきでしょう。

 

公費助成が絡みさえしなければ、

何かあった時は、当然私の自己責任です。

 

電動車椅子は法令上歩行者扱いであり、

免許制でない電動車椅子による移動を操縦能力を理由に禁じる法的規制は存在しない

ことになります。

 

このような思考は私が行政書士であり、法律どうなってるか、

という思考回路を持っていたからできたことです。

 

私は家に籠って生きていくつもりは毛頭ありません。
(違法でない限り)個人の生き方が制限されることはありません。

操縦の安全性が確保されないと、人に迷惑をかける可能性があるというのが

最後に残る倫理的な問題です。

散歩していると、電動車椅子より自転車の方がよほど危険であろう

という場面に結構遭遇します。

 

14年間障害がありながら1度も転倒したことのない慎重さで
「安全に電動車椅子を操縦する」という固い決意のもと、

明確に結論を出しました。

 

「自費で電動車椅子を購入して、

電動車椅子や公共交通機関などを利用して自立する」と。

 

私はこの方法で移動の自立を果たし、一つの壁を乗り越えるべく

現在出かけていく機会を積極的に増やしています。
これで社会参加の道が開けます。

 

何らかのサポートが必要な状況でも、

自分で移動したい意思がある限り、同じような当事者の方には、

可能な限り実現する方法を模索して頂きたいと思います。

事例の一つとしてお役に立てればとの思いで費用面での失敗談を最後に。

■もっとも悪い状態を基準に早期に福祉用具を導入するのが賢明

電動車椅子は高い買い物になります(私は以下で述べる自走式の車椅子にユニットを取り付ける形になったので、作業費もかかりました)。

私は将来的な電動の導入を考えて、一度公費助成の利用を温存して、仕事で人に会うので、

20万円以上する一部オーダーメイドの自走式車椅子を自費で購入していました。

結果論ですが、自走式購入時に助成申請を出していれば、

凝ったものは無理でしょうが、確実に公費で購入できていました。

 

また、私は自走式車椅子を購入するまでに、

10年近く自走式をレンタル利用していましたのでその費用も余計でした。

 

私の反省からケガや病気によって障害者となり、

車椅子を使う可能性がある方(すべての人です)

に役立つようにまとめます。

 

・障害があり、車椅子を使う可能性がある場合、
レンタルでなく公費助成での購入を第一に考える

・自治体によって基準が異なる、いわゆる「ローカルルール」

が存在するので早い段階から関係各所で情報収集する。

・リハビリに打ち込まないといけない時期に、

情報収集作業を自力でやるのはなかなか大変なので、

関係する分野で働かれている知人に頼んだり、

経験者がいるようなら、教えてもらう。

つまり頼れる部分は人に頼ること

 

最後に、私のように損しないために、

とにかく情報を求めるようにして頂きたいです。

経験したことは私もこちらで出し惜しみなくシェアします。

Ⅳ.心のバリアフリーも不可欠の要素

■チャレンジドとして、「自分が必要とする配慮をキチンと伝える」ことが大切

私の場合、「移動の自立(外出)には電動車椅子が不可欠」です。
ただ、電動車椅子があれば、外出は万事OKという訳ではありません。

脳卒中により、私には左半身麻痺まひの障害があります。
それでも右手と右足を使えば自走式車椅子でも、
バリアフリー環境の屋内なら問題なく移動できます。

しかし、屋外の路面の悪い道路、坂道や段差

がある環境ではそれは困難です。

 

同様に自走式車イスを長時間こぐことは体力的に厳しいです。
無論、トレーニングすれば、多少は対応力が付くでしょう。

 

しかし、そこに時間ををかけず、

対応力を上げるために電動車椅子を導入しました。
とはいえ、たとえ電動車椅子であっても、

私一人では対応できない場面はあります。

 

出先で食事などにお付き合いする際、

用意された会場に階段があり、

人の手をお借りする必要がある場合があります。

事前の確認はするのですが、手伝うのが当たり前

と思っている主催者の場合、
担ぐことを前提に会場を決めているケースに

二度遭遇したことがあります。

 

この場合チャレンジドとして、必要となる配慮をキチンと伝える」ことが大切になると私は考えています
前述のような場面ではよたよたとでも歩けるということが威力を発揮します。

全行程を歩けなくても、こういうところを車イスから降りて
手すりにしがみついて階段を使えれば、介助者の負担をかなり軽減できます。
空の車椅子を運ぶのと私が乗ったままの車椅子をかつぐのでは、重量に大きな差があるからです。
電動車椅子は簡易式のものでも自走式よりかなり重いのでなおさらです。

こうした意味で私のような肢体不自由者は身体機能を完全に取り戻すことができなくても
残存機能を維持するために一生に渡るリハビリが必要です。
電動車椅子があり、街のハード面が完全バリアフリーになれば一人での移動は可能です。
しかし、ハード面が完全にバリアフリーでない以上、ソフト面(人の協力)で補う必要があります

Ⅴ.バリアフリー情報の収集に役立つサイトやツール

■今後のバリアフリー情報収集手段の主役はアプリ

1)自分自身が動くために電動車イスが最低限必要
(2)完全バリアフリーの環境でない以上人に助けて頂くソフト面での協力が必要

ですが、常に人の協力が得られるとは限りません。
また、自立心の強い人は
「なるべく人のお世話にならないように」と考えます。

つまり、完全な環境は存在しないという前提で事前準備することが必要です。

そこで欲しいのが「情報」です。

今回は、役立つハード面・ソフト面双方に関わる「情報」にフォーカスします。

 

外出先のバリアフリー状況はどうか
外出先でソフト面での配慮をして頂けるのか、
などの情報が事前に分かっていると助かります。

個別具体的な施設等であれば前者についてはネットで、
後者についても電話で問い合わせれば把握可能です。

このようなことは私のような当事者全てに

あるニーズなので、かゆいところに手の届く

情報提供の試みがなされています。

過去の記事で既に紹介したものもありますが、
有益な情報発信をしている事例を紹介します。
えきペディア
主要な公共交通手段である電車利用の拠点となる
駅のエレベーターの位置などを提供する地図サービス
Check A Toilet
~誰もが気兼ねなく外出できる社会を目指して~
を掲げているNPO法人CHECKの取り組みです。
トイレに着目して、近くの
トイレ情報を検索できます。
他にも車椅子に対応した飲食店の情報を出してくれている
情報サービスもあります。
どれもありがたい情報ですが、地図情報は
地図を読むのが苦手な私にはちょっと
わかりにくいところもあります。

それにどれも点の情報です。

■点と点を結ぶ

「もっとアクティブに移動したい!」となると、

それぞれの点の情報をより分かりやすく
して、点と点を繋いで線にして更には面にしていく
展開があればいいと思います。

 

鉄道なら駅の情報があればいいですが、
それ以外の場所では歩ける人が歩くルートのうち、
車椅子で通りやすいルートはここ!というのが分かれば最高です。

イメージとしては、車のナビの車椅子版です。

更に、ルートごとに気を付けるべき点の情報と
ルート周辺の商業施設や飲食店などの
バリアフリー情報もあれば価値が上がります。

 

で、私ならどのようにその情報を伝えるか。
動画活用を積極的にしていることもあり、
これを動画で伝えると思います。
乗り換えの様子などを実況中継したら、
平面的な地図でみるより圧倒的に分かりやすい
思います。前述のナビのようにリアルタイムで

車椅子の操作に支障を来さないように手元で把握できるような

システムがあれば夢のようですね。

外出が楽しくなって遊び過ぎてしまいそうです(笑)。

 

ビッグデータという言葉のある時代、
まずは色んな地域の情報を集約すれば
役に立つのではないかと思う次第です。

 

このような活動をしている者として、

少なくとも自分の暮らす地域の情報を発信して

お役に立てればと思います。

 

この分野にも先駆者がいらっしゃいます。

■情報を共有する

車椅子ウォーカー(R)」

とても質の高い動画で情報発信をしてくださっています。

とはいえ、一つの主体で広範囲の情報をカバーするのは難しいです。

運営者の織田さんはそこも踏まえて、次の展開としてアプリをリリースされました。

みんなでつくるバリアフリーマップ「WheeLog!」

たくさんの人が参画することでより良いマップ作成ができるので、

私も協力者の一人として情報収集できればと思います。

投稿者プロフィール

島本 昌浩
島本 昌浩
バリアフリーチャレンジ!代表
challenged-view編集長